再エネに活路を見いだす地域活性化
過疎地で住民とつくるまちのカタチ
東急不動産が描く環境先進ストーリー
DATE 2024.01.16
東急不動産が展開する再生可能エネルギー事業のブランド「ReENE(リエネ)」。北海道の最南端にある松前町の「リエネ松前風力発電所」は、主力の1つとして2019年に運転を開始しました。同社では松前町に事務所を構え、6人体制で再エネ事業と地域活性化に取り組んでいます。6人の中で最年少の布目海大さんの地域での活躍を軸に、松前町の再エネ事業の現在地を追いました。
PROFILE
布目 海大
東急不動産 風力発電事業開発部 松前事務所
北海道最南端の町である松前町、海沿いの傾斜地に12基の大型風力発電が立ち並び、数キロ離れた場所からでも、3枚の大きな白い羽根が風を受けてゆったりと回転する姿が見える。東急不動産ホールディングスグループが一体となって開発・運営を推進する「リエネ松前風力発電所」。
同社風力発電事業開発部 松前事務所の布目海大さんの案内で、風車の足元へ。タワーの高さは94メートル、ブレード(羽根)を含む全高は148メートルと日本最大級(開業当時)の大きさだそうです。
「風車1基の出力は3400キロワットで、リエネ松前風力発電所全体の定格容量は約40メガワットです。北海道では初めてとなる大型蓄電池を備えた風力発電所です」(布目さん)
東急不動産は、2018年に再生可能エネルギー事業を「リエネ」ブランドとして立ち上げ、全国へ展開しています。まだ新しい分野ながら、再エネ事業は都市再開発や商業ビルといった都市事業と匹敵するほどの事業規模で、すでに社内の主力にまで成長している事業です。
布目さんは2021年、それまでの渋谷の再開発事業の担当から入社3年目にして松前町へと赴任することになりました。
「松前町にはなじみがなかったので不安もありましたが、地域に根ざしたまちづくりをしたかったので、これはいいチャンスだと思い、期待半分、不安半分の気持ちで松前町に来ました」(布目さん)。
松前町には全国でも有数の強い風が吹き、地域の人にとって、その「風」は厄介な存在でした。松前町の石山英雄町長も風には頭を悩ませてきたといいます。
「10月に入ると風が強くなって、冬には雪が舞ってホワイトアウトするほどで、町民にとっては悩みのタネです。それが風力発電によって、資源にもなり、まちの財産になるとは考えもしませんでした(石山町長)」
「リエネ松前風力発電所」が建設された理由は、資源として風を利用することでしたが、布目さんに求められるミッションはそれだけではありませんでした。
「リエネブランド設立の目的の1つに『地域との共生と相互発展』があります。2019年には、松前町と東急不動産は『風力発電事業と地域活性化に関する協定書』を結び、まちの課題にも向き合いながら地域活性化と再エネ事業に取り組んでいます」(布目さん)
風力発電を通じた地域活性化の取り組みの1つとして、2023年2月には災害時に既存の送配電網を活⽤して⾵⼒発電所の電⼒を届ける「地域マイクログリッド構築」の設備導入が完了。更に、2023年9月には、「風」という資源を生かした町のシンボルを目指した「リエネウインドファーム松前」を開園するなど、取り組みを加速しているといいます。
風力発電設備を活用した地域マイクログリッド構築
対象エリア内では、災害時に既存の送配電網を活用して風力発電所の電力供給が可能になり、地域レジリエンス強化に貢献しています。
「再エネ事業はまちの税収増にも貢献しますし、建設にあたっては地元業者の仕事にもなります。新たな雇用も生まれるのではないかと期待をしています」(石山町長)
東急不動産が松前町に事務所を構えた当初は、さしたる期待も持たずにいたという松前町商工会青年部の西川典英部長。その後の東急不動産の取り組みに驚いたといいます。
「松前の小学校を訪問して『出前授業』をしたり、子どもたちを連れて風車見学にいったり、地域連携に本気で力を入れていることがわかりました。布目さんは本当に一生懸命にやってくれるので心強い」(西川さん)
布目さんは、2021年4月に松前町に赴任して約半年後の9月には、青年部に賛助部員として加わっています。青年部の木村太副部長は「布目さんは、思った以上に住民との距離が近くて、なんでも気軽に話せる相談相手。それにまちの外から来た人で賛助部員になる人はかなり珍しい」と話します。
青年部が主催する夏のビッグイベント「プレミアム・サマーフェスト」では、イベントで使用する電力の一部を東急不動産が提供するポータブル蓄電池でまかないました。
「風力発電の電気を活用できないかと布目さんに話したところ実現しました。それだけでなく東急不動産がブースも出してくれて盛り上げてくれています」(西川さん)
「イベントに参加する上で、企業として協賛するだけでなくまちの人と一緒になってアイデアを出し合い、地元の人の力を借りながら思いを形にしていくことが大切だと思っています。再開発事業も再エネ事業も、建てて終わりではないですし私たちだけでは成り立たない。地域の人に喜ばれるものをつくって、地域活性化にも貢献していくことが私たちの仕事です」(布目さん)
東急不動産の地域活性に取り組む姿勢について、一般社団法人北海道まつまえ観光物産協会(以下、観光物産協会)の松村忠司専務理事は、「東急不動産はまちに事務所を構えていることにまず何より安心感がある」と評価しています。
「それに、布目さんはもちろん東急不動産は観光の盛り上げについていろいろと提案してくれるだけでなく実行に移す行動力がある。リアルタイムに話ができるメリットは大きいですね」(松村さん)
観光物産協会は、2023年4月に松前観光協会と松前物産協会が合併して発足した団体。「新しい組織になるなら統一したブランドロゴが欲しい」と考えていた松村専務理事の元へ、東急不動産から「学生に考えてもらったらどうか」という提案があったといいます。
「こちらが言わずともくみ取って、素晴らしい提案をしてくれただけでなく、実際に『松前町スタケーションプロジェクト』として実施してくれました。布目さんは、まちの活性化にとってとても貴重です」(松村さん)
東急不動産と株式会社学生情報センターが実施した『松前町スタケーションプロジェクト』では、学生が提案したデザインが特産品のパッケージデザインにも採用されています。
松前町における再エネ事業のこれからの貢献について、布目さんは大きなビジョンを展開しています。
「まちとしても定めている目標として、町内で発電した電気で町内の消費電力をまかなう『RE100』があります。私たちには発電や電力小売の知見があるので、町の目標達成に貢献していきたいです。最終的には、町の主要産業の再エネを通じた振興にも波及していって、再エネを中心として地域経済が発展するようなモデルをつくりたいです」(布目さん)
最後に松前町の魅力について布目さんに尋ねたところ、「何をおいても人のあたたかさだと思います」と人好きのする笑顔で答えてくれました。若手を信頼し、その若い力に活躍の場を用意することで地域に溶け込み、事業やまちとともに成長を続けている松前町の姿には、人に向き合い、まちに寄り添うという東急不動産のまちづくりが体現されていました。
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FOUREフォーレ ふるさと納税
再エネ×特産品で地域を応援
再エネ事業による地域活性化の取り組みとして、地域と再生可能エネルギーの共創を目指す「一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会(FOURE)」を2021年に設立。当社は代表理事に就任(2023年9月末時点)。FOUREでは、再エネ発電所のある地域の特産品などを返礼品とした「ふるさと納税」を行い、松前町では特産のマグロや松前漬けが返礼品に並んでいます。ふるさと納税という形を取ることにより、発電所所在地ではないエリアからも再エネ事業を支援できるような先進的な取り組みとなっています。
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東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。