街づくりのプロが「農業」に挑む、東急不動産が描く食の未来

課題を解決するまちづくりプロジェクトノート

DATE 2026.09.30

東急不動産の新事業として、今大きな注目を集めているのが「食料事業」です。
オフィスや住宅、商業施設、そして物流施設など、これまで多角的な都市開発を手掛け、街や人に寄り添ってきたデベロッパーが、なぜ今「食と農業」という未知の領域に挑戦するのか。その背景にある社会課題と、不動産会社ならではのアプローチ、そして描こうとしている未来の姿に迫ります。

PROFILE

石井 拓也

東急不動産 産業共創事業ユニット
インダストリー事業本部 企画営業部

PROFILE

寺尾 たすく

東急不動産 産業共創事業ユニット
インダストリー事業本部 企画営業部

PROFILE

勝部 敬士郎

東急不動産 産業共創事業ユニット
インダストリー事業本部 企画営業部

日本の「食」を支える仕組みが、今、問われている

日本の農業は、大きな転換点を迎えています。

基幹的農業従事者数※は減少を続けており、40年間で346万人から102万人へと大幅に減少。農業の担い手不足や高齢化が進む中、これまで地域農家の皆さんが支えてきた生産基盤を、将来にわたってどう維持していくのかが課題となっています。さらに、近年の気候変動による生育環境の変化なども重なり、日本の「食」を支える仕組みそのものが問われています。

  • 15歳以上の世帯員のうち、仕事として主に自営農業に従事している人
2025年は概数値
出典:農林水産省「農林業センサス」

全国で物流施設開発や再生可能エネルギー事業などを推進する東急不動産は、地方や郊外の土地と向き合うなかで、耕作放棄地の拡大や地域の疲弊という現実に幾度となく直面してきました。現場の行政や地域住民からは「このままでは地域の農業が途絶えてしまう」という切実な声も届いています。

こうした環境変化の中で、東急不動産が目指すのは、社会貢献として農業を支えることだけではありません。
不動産企業としての土地活用、物流、再生可能エネルギーなどの強みを掛け合わせ、農業を持続可能なビジネスとして成立させること。そして、地域課題の解決と新たな事業機会の創出を両立させることにあります。

「テクノファームけいはんな」では1日にレタス3万株を自動栽培

東急不動産が手掛ける具体的な挑戦の一つが、京都府木津川市にある完全人工光型植物工場「テクノファームけいはんな」です。
ここでは、室内の温度や湿度、CO2濃度、光量などを先端センサーで常時モニタリング・制御。天候や季節といった外部環境に左右されることなく、人の手を介さない機械化・自動化ラインによって、1日あたり約3万株のレタスを安定的に生産しています。

工場内でのレタス栽培の様子

栽培したレタスは葉物野菜ブランド「ベジタス」として、西日本エリアのスーパーや飲食店、東急不動産グループのホテルなどに出荷。
さらに、けいはんなで採れたレタスは、大手コンビニチェーンの店内調理サービスのメニューにも採用されました。

植物工場産レタスの「品質と供給量の安定性」や、水耕栽培で衛生的な「調理上の扱いやすさ」が評価された形です。外食・中食領域における新たな可能性を示す事例となっています。

葉物野菜ブランド「ベジタス」

農業経営には大きく分けて2つのリスクが存在します。
天候不順、病害虫、人手不足などによって作物が育たない入口のリスク(生産面)。
不作による価格高騰、逆に豊作による価格下落、流通の混乱で売り先を失う出口のリスク(販売面)。

東急不動産では、テクノロジーを活用した環境制御で「入口のリスク」を抑え、質の高い作物を、必要なタイミングで必要な量だけ届け、価値に見合った適正価格で買ってもらうことで「出口のリスク」も回避する。この実現が、サステナブルな農業の根幹になると考えています。

「イチゴノオカ」プロジェクトで農地を整理し、地域課題の解決へ

埼玉県白岡市で進む「イチゴノオカ」プロジェクトは、耕作放棄地の再生と産業開発を融合させた、デベロッパーならではの先進的な事例です。

これまで耕作放棄地の課題解決に、単独では有効な手段を見出せずにいた農業法人に対し、東急不動産が土地改良事業者として介入。広大な耕作放棄地を整理し、「高生産な農地」と「物流施設用地」を創出しました。

農地の再編と産業用地の創出を一体で進める、白岡市の土地改良事業イメージ

今後は需要期を逃さない供給体制の確立を目指しています。
ケーキなどで年間を通じて需要が高いイチゴですが、国産の夏イチゴは供給量が非常に限られており、多くを海外輸入に依存しているのが現状です。
「イチゴノオカ」プロジェクトでは、データ活用と高度な栽培技術を駆使し、需要が高まる時期に高品質な国産イチゴを供給する体制を整えていきます。

また、単に青果として出荷するだけでなく、加工商品の開発や現地での体験型イベントなどを実施し、街の活性化に貢献する「にぎわい拠点」としての展開も視野に入れています。

農業を起点に広がる都市開発の未来

食料事業はまだ始まったばかりであり、完成された答えがあるわけではありません。だからこそ、不動産開発で培ったノウハウだけでなく、企画、流通、ブランディング、施設運営など、多角的な知見や社内外のアイデアを結集することが求められています。

街をつくり、人の豊かな暮らしを支えてきた東急不動産。
その知見を活かして挑む「食と農業」の新しい未来に、これからもご注目ください。

  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。