「開発と環境保全〜パラオ事業」篇
パラオ パシフィック リゾートにおける価値創造【前編】
~地元に貢献し、喜ばれるリゾート開発~

課題を解決するまちづくりプロジェクトノート

DATE 2022.08.08

  • #パラオ
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自然との調和をめざして開発された本格リゾートホテル『パラオ パシフィック リゾート』。開発にあたり「ヤシの木より高い建物は作るなよ!」と言った初代社長の言葉に象徴されるように、当社はこの開発を通して、40年以上前から現地の環境保全と地域貢献に務めてきました。
担当者と現地支配人に聞いた、パラオでのリゾート開発の歩みと、持続可能な未来に向けた今後の展望について【前編】【後編】に分けてご紹介します。
【前編】は、初代社長の強い思いが反映された『パラオ パシフィック リゾート』の魅力と、その地域貢献についてです。
(本記事は2022年6月の取材をもとに執筆されたものです)

PROFILE

塚原 寛之

ウェルネス事業ユニット
ホテル・リゾート開発企画本部 ホテル・リゾート第一部開発企画G

“地上最後の楽園”につくられたビーチリゾートホテル

塚原:『パラオ パシフィック リゾート』(以下PPR)は、パラオ共和国コロール州のアラカベサン島西岸に1984年開業しました。
パラオ共和国は、太平洋ミクロネシア地域の西端、フィリピンの南東650㎞に位置する大小586の島々からなる国です。グアムから空路2時間で行ける距離にあり、石灰岩と火山島で形成された島々は、森の緑に覆われ、澄み渡るラグーンや入り江に縁どられています。美しい珊瑚礁に囲まれた周辺海域は、多種多様な海洋生物が生息するダイナミックな世界屈指のダイビングスポットとして有名です。

2012年にユネスコの世界遺産(複合遺産)に登録された「ロックアイランド群と南ラグーン」を目の前にする絶好のロケーションにあるPPRは、そんな“地上最後の楽園”ともいえるパラオの自然と文化を存分に体感いただける本格的なビーチリゾートです。
太平洋を一望できる約250mのプライベートビーチからは一年中絶景のサンセットを望むことができます。約64エーカーの広大な敷地には、色とりどりの熱帯植物に彩られたトロピカルガーデンを有し、リゾートの裏山では多様な環境に生息する89種類の植物や、ビーブという名前の国鳥(カラフルで小型のハト)などパラオの固有種を含む35種類の鳥類を見ることができます。

1984年12月の開業時100室から、需要の高まりに応じて1994年10月に60室を増築。2015年7月にミクロネシア地域初の水上バンガロー5棟5室(1棟独立型)、2019年5月にパラオ初となる独立型のプールヴィラ7室などを含む新エリア『The Pristine Villas and Bungalows』を開業し、現在パラオ国内最多の客室を有しています。
南太平洋の情緒とパラオの文化をモチーフにしたインテリア、ビーチリゾートならではの充実したアメニティ、マリンアクティビティをはじめとするさまざまなリゾート設備、さらに温かく真心のこもった“パラワン・ホスピタリティ”などで高い評価をいただき、2012年にワールドトラベルアワードを受賞、ダイブ&トラベルアワードの「ベストダイビングリゾート」も14年連続で受賞しています。

パラオの自然と文化を最大限に活かしたリゾート開発

塚原:PPRの開発は、五島昇初代社長のパラオに対する深い“思い入れ”から始動しました。1956年、戦後はじめて民間人としてパラオ入りし、その自然の美しさと文化に感銘を受けた五島初代社長は、1967年に東急グループの新規投資先としてパラオを選定。当初、東急ホテルズ・インターナショナルがこのプロジェクトを進めていましたが、現地の反対などから用地確保は困難を極め、途中から当社が引き継ぐことになりました。厳しい状況のなか歴代担当が奔走し、1976年に用地を確保。ようやく開発にこぎつけました。私は1987年入社で、1995年からパラオを担当していますが、開業後も、電気や水道など公共インフラが脆弱なパラオでの施設維持には、数々の苦労がありました。

「ヤシの木より高い建物は作るなよ!」という五島初代社長の言葉に象徴されるように、PPRの開発のコンセプトは、当初から「自然環境と開発の両立」、そして「地元に貢献し、地元の人々に受け入れられる事業」でした。今でこそサステナビリティは、企業が担うべき当然の社会的責任となっていますが、そんな言葉さえない40年以上前から、当社はあたりまえのように自然との調和と共存をめざす、持続可能なリゾート開発に取り組んできたのです。

開発にあたっては、海流調査や植生調査など綿密な環境調査のもと、海浜改修やサンゴの移植などを行い、長年を費やし生物多様性を維持する美しいプライベートビーチをつくり上げてきました。
建物は、ヤシの木よりも低い2階建て以下の高さに設計され、屋根はパラオの伝統建築アバイ(集会場)を模しています。建物はすべて周囲の海や緑に融和するデザインに統一され、インテリアにはパラオの文化や伝説がモチーフとして取り入れられています。

現地社会に貢献しながら観光立国パラオの経済をリード

(左)ルーシー・スギヤマ:『パラオ パシフィック リゾート』総支配人
(右)財務部長

スギヤマ:私は1984年、開業前のパイオニアスタッフとしてPPRで働きはじめました。開業以降、フロントオフィスから11の部署を経て、2019年から総支配人を務めています。また、PPRでの実績が認められ、パラオの政府観光協会や環境団体など、ホテル以外の複数の組織で役員を務めています。
PPRの全従業員の約8割はパラオ人です。PPRはこうしたパラオ人の雇用創出に加え、ホテル・観光業における人材教育などを通して、地域社会に貢献してきました。なかでも現地のパラオ人たちとの協力により、環境保全など多くのことを成し遂げてきたPPRは、時代をリードする存在として、パラオのみならず、ミクロネシア、太平洋圏に広く知れわたっています。
PPRがあるアラカベサン島では、当初開発への反対運動もありましたが、今は良好な関係を築くことができ、地元の人々もPPRの活動に大きな感謝を寄せています。

アラカベサン島の西岸はもともと地元の方々が、ピクニックを兼ねて魚釣りやタロイモの収穫に訪れる憩いの場所でした。そのため開発にあたり海辺の敷地への出入りを制限されることに、当初大きな反発がありました。しかし、近隣の住民を従業員として雇用し、まずは彼らに私たちの思いを伝え、それが地元の方々に伝わり、次第に環境保全に配慮したリゾートホテル開発・運営への理解を得られるようになりました。当時、採用した若者たちが、現在は若い従業員を教育する立場になり、地域の意識もかなり高まってきました。今では、大統領をはじめ地元の方々が「これがパラオの代表的なリゾートホテルだ」と諸外国からの要人へ自慢してくれる施設になっています。
  • 4 質の高い教育をみんなに
  • 6 安全な水とトイレを世界中に
  • 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 8 働きがいも経済成長も
  • 14 海の豊かさを守ろう
  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。