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「開発と環境保全〜パラオ事業」篇
パラオ パシフィック リゾートにおける価値創造【後編】
~自然と人間が共存する環境先進リゾート~

vol.44

2022.08.08

自然との調和をめざして開発されたビーチリゾートホテル『パラオ パシフィック リゾート』。開発にあたり「ヤシの木より高い建物は作るなよ!」と言った初代社長の言葉に象徴されるように、当社はこの開発を通して、40年以上前から現地の環境保全と地域貢献に務めてきました。
担当者と現地支配人に聞いた、パラオでのリゾート開発の歩みと、持続可能な未来に向けた今後の展望について【前編】【後編】に分けてご紹介します。
【後編】は、「挑戦するDNA」で取り組んだ環境保全活動と、環境先進リゾートへのさらなるチャレンジについてです。
(本記事は2022年6月の取材をもとに執筆されたものです)

(中央)塚原 寛之:
ウェルネス事業ユニット ホテル・リゾート開発企画本部 ホテル・リゾート第一部開発企画G
(左)ルーシー・スギヤマ:
『パラオ パシフィック リゾート』総支配人
(右)Mr.Eyos Rudimch:
パラオ共和国コロール州知事

「挑戦するDNA」でさらなる環境先進リゾートをめざす

塚原『パラオ パシフィック リゾート』(以下PPR)では、長期的視野で40年以上にわたり、さまざまな団体と多彩な環境保全活動を行ってきました。
その一つがPPR前面海域の保護区化です。(2002年12月2日にコロール州により海洋生物保護区に認定)つまり、生息する魚・サンゴなど566種以上の海洋生物の保護です。このなかには、絶滅危惧種であるオオシャコガイやウミガメ(タイマイ)やナポレオンフィッシュなども含まれ、その保護強化のため、オオシャコガイの幼貝の放流や、ウミガメの放流なども行っています。

タイマイ(海亀)放流イベント
タイマイ(海亀)放流イベント
ジャイアントクラム(幼貝)放流イベント
ジャイアントクラム(幼貝)放流イベント

スギヤマ自然保護活動やプログラムの開発を推進するため、PPR内にさまざまな部署に属する15人の従業員からなるGreen care committeeを結成しました。学校やコミュニティなど地元の民間団体や非営利団体にも呼びかけ、活動のPRやプログラムの促進も積極的に行っています。

「挑戦するDNA」でさらなる環境先進リゾートをめざす
「挑戦するDNA」でさらなる環境先進リゾートをめざす

塚原ここ数年のコロナ禍で、お客さま参加型の環境活動は、一時休止せざるをえない状況ですが、ビーチクリーニング、ホテル敷地外の地域清掃など、PPR周辺の自然環境を美しく保つ活動は現在も続けています。それと同時に、地元の生物学者や専門機関の協力を得ながら、敷地内に生息する植物や鳥類の数や種類、ならびに環境変化による生態系への影響などのモニタリング活動や調査研究も改めてはじめており、観光復活に向けた環境整備や準備を進めています。

環境に配したインフラシステムを施設独自で構築

塚原私たちが開発から続けてきた取り組みのなかで、もっとも特徴的なのがPPRのインフラシステムです。パラオの公共インフラは脆弱で、公共水道水は水源の安定的確保と送水管に問題があり飲料水としては使用できません。また、パラオ国内では、いまだに週1~2回の停電はめずらしくありません。当然、開発時も公共インフラに頼ることはできず、電気・水道・汚水処理の設備を独自に構築する必要がありました。調査を重ね、日本の各専門業者からのさまざまな提案を参考にしながら、省エネをテーマに効率的なインフラシステムをつくりあげてきたのです。ここが、PPR開発担当の諸先輩方が一番苦労した部分だと思います。汚水に関しては、公共設備に放流できるようになりましたが、今でも緊急時は自前の設備を利用しています。

沢水浄水設備
沢水浄水設備

特筆すべきは、飲料水の給水システムです。敷地内に掘られた2つ井戸に加え、旧日本軍が建設したダムを活用し山からの沢水を貯水、建物屋根を利用して雨水を集めるなど、敷地内でさまざまな水源を確保しています。その水をろ過・滅菌し、一度貯水タンクに圧送し、タンクから重力を使ったシステムで給水し、1年中、施設内のどこからでも安全で美味しい水が飲めるようになっています。飲料水は日本の保健所で定期的な水質検査も受けています。ただし、エルニーニョ現象などの異常気象で、干ばつが起こることもあります。その場合は、節水体制に切り替えるとともに、海水淡水化装置も導入し、井戸の水源を温存しながら対処しています。

海水淡水装置・浸透膜配管
海水淡水装置・浸透膜配管

SDGs17項目を意識し、活動をよりブラッシュアップ

スギヤマ新型コロナウィルス感染症の世界的な感染拡大の影響で、ホテルを数か月休館せざるを得なくなったのは非常に残念です。しかしながら、私たちには私たちを取り巻く自然環境を保持していく社会的責任があります。通常営業再開に向けて、改めて目標を設定し直し、旅の目的地にふさわしいサステナブルで魅力的な環境保全リゾートをめざしていきます。

塚原五島初代社長から受け継いだ哲学と美意識のもと、歴代担当者が自然体で続けてきたPPRの活動を振り返ると、17項目あるSDGsの多くに当てはまると思います。ただ、これを対外的に公表していくためには、国際的に実績のある環境機関からの認証や、客観的な記録、科学者や専門家の学術的な根拠が必要だと考えています。コロナ禍でまだ実現していませんが、今後はホテル組織内にエコマネージャーの登用も検討しています。

また、多岐にわたる活動内容を、一つひとつ精査し、ブラッシュアップしていくことも必要です。これまでの実績をPPRの確かな価値に変えていくためにも、SDGsの項目と照らし合わせた評価をしていくことが早急な課題です。
インフラに関しては、すでに導入しているコージェネレーションの排熱交換システム(※1)をより進化させ、排熱を100%利用したより環境にやさしい冷房システムや吸着式冷凍機の導入なども模索しています。
将来的には、PPRをSDGsの17項目をすべてクリアできるリゾートにすることが目標。それだけの可能性は十分あると考えています。

(※1) 天然ガス、石油、LPガス等を燃料として、エンジン、タービン、燃料電池等の方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステム。PPRでは、発電機からの排熱を利用してお湯をつくり、施設内に供給しているが、それでもまだ排熱が余っている

コージェネ(熱交換器)
コージェネ(熱交換器)
  • 4.質の高い教育をみんなに
  • 6.安全な水とトイレを世界中に
  • 7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 8.働きがいも経済成長も
  • 14.海の豊かさを守ろう
  • 15.陸の豊かさも守ろう
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。
本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。