昼も遊べる“すすきの”へ
チーム力で乗り越えた若手の学び

課題を解決するまちづくりプロジェクトノート

DATE 2024.02.29

  • #都市開発
  • #新しい過ごし方
  • #商業施設

北海道札幌のナイトタイムエコノミー(夜間経済)を象徴するすすきの。2023年11月30日、その玄関口に『昼も眠らない街ススキノへ』をコンセプトにした大型複合商業施設「COCONO SUSUKINO(ココノススキノ)」が誕生しました。新卒で入社してすぐこのプロジェクトの開発担当となり、日々の業務の中で経験を積みながら情熱を持って理想の施設となるよう奮闘したという今井優希さんに、この施設への思いも込めて、計画段階から開業までを振り返ってもらいました。

PROFILE

今井 優希

東急不動産 都市事業ユニット
開発企画本部 開発第二部 事業企画グループ

PROFILE

志村 敦史

東急不動産SCマネジメント
運営推進本部 第2運営部 札幌プロジェクト推進課 課長
COCONO SUSUKINO総支配人

すすきのに新たな「あそびば」

北日本随一の繁華街・すすきの。その入り口となるすすきの交差点の酒造会社の看板の通りを挟んだ向かいに、東急不動産が手がけた大型複合商業施設「COCONO SUSUKINO」が誕生しました。

ちょうどすすきのの玄関口となる場所にふさわしく、施設の壁面には高さ約26m、幅約9mという道内最大のデジタルサーネージと同じく道内最大の650平方メートルのビルボードが設置され、酒造会社の看板と相まって、まるですすきののゲートとして来街者を迎え入れるかのように見えます。

施設のコンセプトに、『札幌の街に「あそびば」を 〜昼も眠らない街ススキノへ〜』と掲げるCOCONO SUSUKINO。その建設プロジェクトの動き出しから開発担当として参加している東急不動産の今井優希さんは、コンセプトに込めた思いをこう話します。

「国内有数の繁華街として、夜のまちというイメージのあるすすきのエリアにおいて、一日中過ごせる“あそびば”として、COCONO SUSUKINOがハブとなりまちのにぎわいを生み出していきたいという思いがあります。とはいえ、COCONO SUSUKINOだけでどうにかできることではないと思っています。地域の方々と一緒になって、すすきのをさらに盛り上げていきたいですね」

地下1階と地下2階に食物販の店舗として道内の食品スーパーや人気店が並び、1階と2階には日用品から雑貨、コスメ、ファッションなどの店舗が入っています。3階はバラエティー豊かな食を楽しめる「COCONO FOODHALL」、4階にはややお酒に軸足を置いた「COCONO横丁」があり、さらに5階から7階のシネコンと、7階から18階にホテルもあるとなれば“一日中楽しめる”というコンセプトもうなずけます。

この場所は、もともと1974年に札幌松坂屋が開業し、その後、1994年にロビンソン百貨店、2009年から2020年まではススキノラフィラとして地域の方に親しまれてきました。

2023年11月30日の開業当日、開店前からオープンを楽しみにしてきた地域の方々の長い行列が。列に並んでいた20歳の大学生が、こんな話をしてくれました。

「ラフィラには、何かを買う目的があって来ていました。でも、COCONO SUSUKINOは、何でもあるので、特に理由がなくても“何かあるかも”っていう感覚で遊びに来たいですね」

2023年11月30日に開催されたオープニングセレモニーの様子
札幌市営地下鉄「すすきの」駅の出口5から直結でアクセス可能

自らの意見臆さずに出す

開業初日、今井さんは忙しく立ち働きながらも、ときおり感慨深げな表情を見せていました。

「2019年4月に入社して、1カ月ほど新人研修がありました。それが終わるとすぐに開発部署への配属が決まり、このプロジェクトを担当することになりました。今日まで、本当に山あり谷あり、様々なことがありました。社内外と毎日のように議論を重ね、一つ一つ出した答えがこうして形となり、開業を迎えることができて本当にうれしいです」

入社前から希望していた開発の仕事とはいえ、当初は戸惑いもあったといいます。

「率直に言って驚きました。商業施設に携わりたいと思いこの会社に入社したものの、全体を統括する事業推進を担当するチームに入り、コンセプトの立案から予算調整、スケジュール管理、社内外の各種合意形成、といったことを進めることになるとは予想もしていなかったのです。まだ何の経験もない私にできるだろうかと思いました」

そうした戸惑いはあったものの、すすきのというまちにまったく新しいコンセプトの複合商業施設をつくるにあたり、上司からは「(当時の)プロジェクト関係者では少数派の『若手女性』の意見はとても貴重。不動産デベロッパーに染まっていない感性を生かして、心から自分が来たいと思う施設をつくりなさい」と言われたといいます。

「若手の失敗なんて上司がカバーするから大丈夫、自分の思う通りにやってみて」と常に上司に背中を押されながら、物おじせずに分からないことは質問するという積極的な性分を発揮して、仕事を覚えていった今井さん。ここまでくる中には苦労もたくさんあったといいます。

「当時の上司からは、『常に、相手に求められるものよりも高いものを出そう』と言われました。COCONO SUSUKINOは当社も含めた5社の共同事業ですが、当社が全体をまとめる立場を担っていました。『若くとも、毎回期待を超えるものを出していけば、おのずと信頼してもらえる』というのが上司の教えでした」

その言葉通りに、施設のコンセプトや地域との連携活動を立案する際にも、さまざまな事例を徹底的に調べ、メリット・デメリットを整理した上で、毎回複数のパターンを用意して、共同事業者との意思統一の場をつくっていったそうです。

「竣工後に共同事業者と行った祝賀会の場では、『このプロジェクトとともに新入社員時代から年々成長され、たくましくなりましたね』『今井さんの説明はいつも安心して聞いていましたよ』と共同事業者から言っていただけて、とてもうれしかったです」

こうした今井さんの仕事ぶりを間近で見ていたうちの1人に、COCONO SUSUKINOの総支配人である東急不動産SCマネジメント株式会社の志村敦史さんがいます。

意見をぶつけ最高を見いだす

これまでも商業施設の運営に長く携わってきた総支配人の志村さん。その上で、今井さんの仕事ぶりをこう評価しています。

「私は経験が長い分、考え方が凝り固まってしまっていた部分もあります。そうしたなか、彼女が信念を持って新しい考え方や発想をぶつけてくれました。若い方と仕事をしたことで刺激にもなりましたし、とても勉強になりました」

運営と開発では、仕事の性質・立場が異なる。志村さんも今井さんも、そのことを尊重した上で、お互いの意見を常に交わしてきました。

「私は開発の立場なので、コンセプトをどう形にするかやデザインの美しさを考えてしまいます。志村さんは本当に運営ファーストな方で、私が気づかないようなお客様目線、テナント様目線から、いかに利用しやすいかを大切にされるので、たくさんの気づきをいただきました」

経験も立場も違えど、お互いにCOCONO SUSUKINOをより良いものにしようという思いは強く、だからこそ意見がぶつかることもあったのだとか。志村さんがこう振り返ります。

「お互いに折れず、議論を尽くしたことも多々ありました。そのなかで彼女の熱意に負けた部分もあります。例えば、1階に地域共創型のラジオスタジオがあります。当初、商業施設にはインフォメーションが必要だと私は考えていましたが、もっと新しい利用方法があるのではないかと。お互いにアイデアを出し合い、資料をつくって議論を深めました。その結果、地域のハブとなるこの場所から新しいことを発信していきたいという思いで一致して、ラジオスタジオにしました」

全国初共創型オープンラジオスタジオ「MID.αSTUDIO」は、様々な放送局と地域の方々が地域の生の情報を発信するラジオブース
地下鉄すすきの駅直結の待合スペースにはコンセントの差し込み口も

今井さんも笑いながら、こう返します。

「私も何度も負けましたよ。でも、志村さんは頭ごなしに意見を押しつけるのではなく、いつも寄り添う議論をしてくださいました。だから、議論はぶつかりますが、人としてのぶつかり合いは一度もありませんでした」

お互いが笑顔でこれまでの日々を楽しげに語り合う様子に、傍目(はため)にも本当に“良いチーム”だったことがうかがえました。

地域の期待に応えるわくわくする開発を

入社してはじめての仕事が、大規模な開発プロジェクトで、その最初から開業まで見届けた今井さん。開発チームの人の入れ替わりもあり、気がつけばチームの中では1・2番を争う古株メンバーとなっていました。

竣工式の際、ススキノラフィラの運営を行っていた企業の代表からいただいた、「皆さんのおかげで、本当に良い施設ができたなと思いました。ありがとうございました」の言葉に、さまざまなことが思い起こされて涙がこぼれたといいます。

「新人のころから責任のある立場に立たせてもらい、事業全体に携わらせてもらったこと、社内外に育てていただいたことに感謝の思いです。本当にこんなにも、『働くのが楽しい!』と思えるなんて考えてもいませんでした。開業以降、施設内でお客様の楽しそうな様子を目にすると、このプロジェクトに携わることができて、毎日全力投球してきて良かったなと心から思います。この経験を大切に、これからも全力で楽しく仕事をしていきたいと思います」

わくわくするような開発が、地域を巻き込んだまちづくりには求められているのかもしれません。東急不動産の若い力には、そんなわくわくの源泉があるように感じました。

COCONO SUSUKINO
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北海道で次々と成果が実る
東急不動産の新たな価値創造に向けた取り組み

東急不動産では、北海道において再生可能エネルギー、リゾート開発、都市開発、住宅事業の4つの事業を展開し、環境やサステナビリティとともに地方創生にも積極的に取り組んでいます。

再生可能エネルギーでは、道南・松前町で運営する「リエネ松前風力発電所」など複数の発電施設を道内に有するほか、札幌市にも近い石狩市では2026年の開業に向け再生可能エネルギー100%で運用するデータセンターの準備も。なお、石狩市は環境省が選定する「脱炭素先行地域」にもなっています。

リゾート開発では、北海道屈指のリゾートであるニセコにおいて、1980年代後半からリゾート開発に取り組んでおり、同町の街づくりプロジェクト「Value up NISEKO 2030」を掲げ、ニセコエリアのさらなる価値向上に貢献しています。

札幌すすきのに誕生した新たな大型商業施設「COCONO SUSUKINO」など、東急不動産の地方創生の成果が北の大地で次々と形になってきています。再生可能エネルギー、リゾート開発、都市開発、住宅事業という東急不動産の持つ各事業の強みが一体となり、各地の自治体と連携しながら、また新たな価値を創造してくれるのではないでしょうか。

東急不動産が北海道で展開する主な事業