
海の森を再生し地域を繋ぐ「勝浦ブルーカーボン推進プロジェクト」への挑戦
東急不動産が描く環境先進ストーリー
DATE 2026.01.09
豊かな生き物を育む海の森、藻場(もば)※1が失われつつある千葉県勝浦市。この深刻な課題に、東急不動産グループは地域とタッグを組み、「勝浦ブルーカーボン※2 推進プロジェクト」を立ち上げました。藻場を食い荒らす植食性魚類を駆除し、さらにその「未利用魚」である植食性魚類を「勝浦ブルーバーガー」として活用。環境保全と地域経済の活性化を「食」で繋ぐ、サステナブルな取り組みと、担当者の想いをご紹介します。
- ※1藻場(もば)とは、海藻や海草の群生地
- ※2ブルーカーボンとは、海洋生態系に取り込まれ貯留される炭素のこと。海藻などが光合成で大気中の二酸化炭素(CO₂)を吸収し、その一部が枯れた後に海底に埋もれることで、長期間貯留されます。

PROFILE
青島 一樹
ウェルネス事業ユニット
ホテル・リゾート事業本部 リゾート事業部
リゾート事業グループ
豊かな海がなぜ危機に瀕しているのか?
千葉県勝浦市は、暖流(黒潮)と寒流(親潮)が交わる稀有な海域に面し、夏は涼しく冬は暖かい海風に恵まれた街です。沿岸でも水深が深く、カツオ、キンメダイ、イセエビ、アワビなど豊かな海産物を育むとともに、400年以上続く朝市文化を持つなど、「海」と共に発展してきました。

しかし近年、温暖化による海水温の上昇と植食性魚類の増加で、藻場が大幅に減少しています。藻場はアワビ・イセエビなどの生育に欠かせないだけでなく、多様な生態系を支える海の森。このままでは、地域の水産業や生態系全体に甚大な影響が及びます。
当社は、勝浦市で「東急リゾートタウン勝浦」を運営する企業として、地域全体の価値向上と課題解決が不可欠であると考え、市や漁協、地域の方々とともに「勝浦ブルーカーボン推進プロジェクト」をスタートしました。
行政、漁協、企業がタッグを組んで地域課題に向き合う
こうした背景のもと、2025年5月には勝浦市や漁業協同組合、研究機関と連携し、「勝浦市藻場保全対策協議会」を設立。
藻場の現状を把握するための調査を実施し、植食性魚類の駆除などを本格的に開始しました。
(写真提供:千葉県水産総合研究センター)
私たちは藻場の維持・回復を目指すとともに、勝浦の自然資本・社会関係資本を強化し、生物多様性の損失を回復させる「ネイチャーポジティブ」を基軸としたリゾートタウンの実現を目指しています。
環境貢献を“美味しく・楽しく”体験できる食のイノベーション
藻場保全の過程で駆除される植食性魚類は、加工の手間などから市場にほとんど流通しない“未利用魚”です。当社はこの魚を廃棄せず、地域価値へ転換することを目指し、未利用魚を活かした「勝浦ブルーバーガー」を開発しました。
2025年9月に開催された「東急リゾートタウン勝浦」内イベントでお披露目したところ、多くの来場者に注目され、翌10月には勝浦東急ゴルフコース内のレストランで本格的な販売を開始。
供給量に限りがあるため1日最大10食の限定販売としましたが、発売初月だけで約110食を提供するほどの反響があり、「美味しい!」「香ばしくてボリューム満点だった」といった声が寄せられました。
藻場保全から食卓までのストーリーをより多くの方に届けるため、急遽メディア向けの試食会も開催。実際に味わっていただくことで高い評価につながり、テレビでも取り上げられるなど、プロジェクト全体の認知向上に大きく寄与しました。
磯焼けを止める段階から、海の森を増やすフェーズへ
プロジェクトは今、磯焼けの進行を抑える取り組みから、藻場そのものを新たに造成し「海の森」を再生する次のフェーズへと踏み出そうとしています。藻場が回復すれば、CO₂を吸収・貯留するブルーカーボンの創出にもつながるため、当社はJブルークレジット※の獲得を目指して準備を進めています。
※Jブルークレジットとは、ブルーカーボンへの取り組みに対し、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が評価・算定し、これを認証・発行するクレジットのこと。
また、ブルーバーガーの開発をきっかけに、未利用魚や地場食材を活用した新たなご当地サステナブルフードの創出にも取り組んでいきます。
プロジェクト担当者からコメント
東京から車で約2時間、東京駅から特急で約90分の勝浦市は、カツオ・イセエビをはじめとする豊富な海の幸に恵まれた魅力あふれる地域です。当社がこの地で長年リゾートタウンを運営する中で、次の50年を見据えたとき、地域の基盤である藻場の衰退は見過ごせない課題でした。
藻場保全を進める過程で、駆除した植食性魚類が「未利用魚」として廃棄されている現状を知り、食材として食べることでも環境貢献できるようにできないかと考えたことが、勝浦ブルーバーガー開発の出発点です。
試行錯誤しながらのPRでしたが、藻場保全から食卓へ至るストーリーをメディアの皆様に直接伝えたことで、テレビで紹介されるなど大きな反響につながりました。
この活動は、地域住民、漁協、行政、お客様など、多くの方々との食と環境を通じた新しい繋がりを生み出しています。今後も藻場の新たな造成など、ブルーカーボンへの取り組みを加速し、勝浦の持続可能な街づくりに貢献してまいります。
東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。


