原宿の商業施設に“街の銭湯”をつくる小杉湯が原宿の街と歩み出す、新たな100年のはじまり

100年に1度のシブヤ大改造

DATE 2023.11.17

  • #広域渋谷圏構想
  • #都市開発
  • #商業施設

東急不動産は、広域渋谷圏において渋谷が持つ魅力である「創造力」「発信力」を共に加速させていく多様な「人」や「企業」とはじめる取り組み、「PROJECT LIFE LAND SHIBUYA」を進めています。
取り組みの一環として、2024年春に開業予定の東急プラザ原宿「ハラカド」には、高円寺で90年続く老舗銭湯「小杉湯」が営む新たな銭湯がオープン予定です。
高円寺の銭湯と原宿の商業施設、一見縁遠そうな両者の奥底には、街を愛し、街に愛される場所を営もうとする想いが流れ続けています。
開業にむけた想いと取り組みについて、「小杉湯」三代目の平松佑介さん(以降、敬称略)と「ハラカド」のプロジェクト担当が語ります。

PROFILE

平松 佑介

昭和8年に創業、国登録有形文化財の老舗銭湯「小杉湯」の三代目

PROFILE

大西 里菜

東急不動産 都市事業ユニット渋谷開発本部プロジェクト推進部事業企画グループ

日常的に街や人に愛される施設とは?そんな時に出会った銭湯という存在

大西:「ハラカド」の企画が立ち上がった頃、新型コロナが流行し世の中の消費の価値観が大きく変わってしまい、商業施設の存在意義さえも問われる状況でした。そんな中、「小杉湯」との出会いがありました。代表である平松さんは、高円寺で愛され続けてきた小杉湯を守り続けていくことを使命とされていたので、私たちからの提案には大変驚かれたと思います。銭湯も今の時代には存在意義が問われる業態であり、この先ずっと続けていくために街と共に営みを続けようとする平松さんとなら、この課題に取り組めると希望が持てました。

平松:東急不動産さんから連絡をいただいたときは、とにかく驚きでいっぱいでした。高円寺という街が大好きで、このエリアから出ることや2店舗目を出すという発想自体がなかったからです。

大西:都心の商業施設にあえて「銭湯」を入れることで「日常的に街や人に愛される施設を目指す」という発想からの提案でした。街を半径2.5kmの「面」で捉える広域渋谷圏という捉え方や、施設と暮らしを近づけたいという想いをお話させていただきました。全国から銭湯が消えつつある中、東京においてもピーク時から80%以上減少しています。銭湯は、その街で「働き」「遊び」「暮らす」人たちが毎日のように訪れ、街と交わる日常の時間をつくる役目を担ってきたと思います。銭湯のない原宿に銭湯が持つ文化も含めて取り戻したい、という想いからこのプロジェクトが立ち上がりました。

平松:小杉湯の大半のお客様は、半径500m位の徒歩圏内と自転車なら半径2km程の距離の方です。その街で働き、遊び、暮らす人たちを交わらせようとするこのプロジェクトは、私たちが高円寺で掲げてきたビジョンと重なるものかもしれない。チャレンジしたいことの方向性が似ているなと思いました。「街と向き合い、街の人に愛される場所を作りたい。地域に根差して、地域と共に歩んでいきたい。」という東急不動産さんの想いに共感できました。

東急プラザ原宿「ハラカド」外観
原宿・神宮前エリアアップ

デベロッパーと街の銭湯、規模も立場も違う両者を繋げるのは「地域と共に歩む」という共通した想い

大西:ローカルに根差した小杉湯の2店舗目オープンと、デベロッパーの東急不動産が商業施設に銭湯を開くことは、双方にとって大きなチャレンジでした。将来的なビジョンは同じとしていても、お互いの考えの違いに戸惑う場面もありました。銭湯という空間を活用してどう企業とつなげるのか、全くまとまらない時もありました。ただ、そういう不安が生まれたら、お互いに高円寺と原宿の街に直接足を運び、何度も何度も対話を重ねて。その度に、小杉湯さんはこれまでの経験をもとに、いろいろな可能性を提案してくれて、凝り固まった固定観念や直感が取り除かれていきました。

平松:規模も業界もまったく違う、デベロッパーと街の銭湯が一緒に事業に取り組むので、最初は思いが通じ合わない場面も多く、諦めようとした日もありました。銭湯が、”ただの消費の場”として捉えられている感覚をもち、ぶつかった日もありました。
しかし、大西さんをはじめ、このプロジェクトに関わった東急不動産の方々の熱量の高さ、そして渋谷の街づくりや新たな「小杉湯」に本気で挑み、成功させる強い想いが伝わってきて、人と人との関係性で結ばれたチームになれたと感じています。

プロジェクトの現地見学会説明会の様子

生活で訪れる場所の銭湯が「ハラカド」にある。だから、人と企業が繋がり、商業施設が街から孤立しない。

平松:昨今はスーパー銭湯やサウナ付き施設などが人気ですが、その大きな魅力は、1つの建物で体験が完結すること。一方、街の銭湯の魅力は、お風呂に入る前後で街を体験できることです。お風呂に入るだけの銭湯だからこそ、高円寺では地域の商店街や飲み屋との交流が生まれています。そんな体験を原宿の街でも味わってほしいと思っています。

大西:ハラカドには、フードコートや共有スペースなど、銭湯の前後で過ごせる場所がたくさんあります。銭湯は、誰もが生活の中で訪れる場所だからこそ、人や企業のコラボレーションが生まれる場所だと気付きました。お風呂という日常のことが「ハラカド」にあることで、商業施設が街から孤立しない場所になるのだと思います。

小杉湯写真

新しい価値を共有して共感する仲間を集める、それにより流行ではなく文化をつくる共創が生まれる

大西:新しいプロモーションのあり方についても深く検討しました。「プロセスの可視化によるファンコミュニティの形成」を打ち出し、一般消費者を巻き込みながらファンを作っていこうというプロモーションです。これまでのように、事前にテナント名を打ち出すのではなく、完成するまでの間そこに集う人がどんな想いで準備を進めるのか、何をしていくのかの取り組みや想いを発信し、共感する人たちを集めていこうというものです。

平松:開業前のタイミングだからこそ繫がれる人たちがたくさんいます。オープン前にどこまで面白くできるかが勝負だと思っています。

大西:テナントの方々によって構成・運営されるクリエイティブコミュニティ「ハラカド町内会」を立ち上げ、テナント間の交流で新しい価値を共有し、そこに共感できる仲間を増やす動きも始まりました。新しい文化を創造し発信する商業施設を目指します。原宿・神宮前交差点という都会の中に銭湯をつくり、人と街と企業との様々な共創を生み出す拠点として、東急プラザ原宿「ハラカド」の魅力を広めていきたいと思います。

「ハラカド」および「オモカド」名称に込めた思い

「ハラカド」「オモカド」という名称には、「かど」が合わさり、人々の出会いの交差点となり、新しい文化を生んでいく、という想いを込めました。「かど」と読む漢字に「角」「門」「才」があります。「角」は、神宮前交差点の角に建つ二つの施設を表し、また人と人が出会う街角を表します。「門」は、明治神宮や原宿・表参道への入り口、新しい自分や新しい文化への入り口を表し、未知との遭遇に対する縁起の良さやワクワク感を喚起します。「才」には、様々な才能を持つクリエイターが集う場所という意味を持たせました。原宿と表参道が交わる神宮前交差点の「角」に、様々な「才」のある人々が出会い、新しい文化への「門」となる場所として「 ハラカド」と「オモカド」が誕生します。
ロゴデザインは、「ハラカド」に入居する株式会社れもんらいふの千原徹也さんが手掛けました。

株式会社れもんらいふHP:https://lemonlife.jp/

広域渋谷圏における東急不動産の取り組み「PROJECT LIFE LAND SHIBUYA」

「PROJECT LIFE LAND SHIBUYA」は、「人と、はじめよう。」をコンセプトにした、広域渋谷圏における東急不動産の取り組みです。多様な人や企業との共創や、交流の仕組み・場づくりを通じて「創造」「発信」「集積」を循環させ、共感する人や企業とパートナーシップやアライアンスを構築していきます。
当社は、2024年度までに渋谷桜丘、原宿・神宮前、代官山、代々木公園エリアで4つのプロジェクトの開業を予定しています。広域渋谷圏におけるエリアを連携させ、長期的な視点のもと、まちの魅力を高めていきます。

PROJECT LIFE LAND SHIBUYA
HP:https://life-land-shibuya.com

  • 8 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられる まちづくりを
  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。