SWiTCH 佐座マナが「CIRTY」からはじめる、サステナブルな緑の街・渋谷

東急不動産が描く環境先進ストーリー

DATE 2024.02.29

  • #代官山
  • #サーキュラーエコノミー
  • #SDGs

2023年10月19日に誕生した「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」。MAIN棟とTENOHA棟の2棟からなるこの施設、TENOHA棟ではサステナブルな生活体験を提供する取り組み「CIRTY(サーティー)」が始動します。多様なメンバーが参加できるこの活動が叶えようとする未来とは? 「CIRTY」を主導するSWiTCH代表・佐座マナさんに話を伺いました。

代官山の新複合施設に「サステナブル」の活動拠点が登場

東急不動産は、代官山に新しい複合施設「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」を2023年10月19日に開業しました。本物件は代官山駅至近かつ八幡通り・代官山通りに面する立地に、賃貸住宅・シェアオフィス・商業施設で構成され、建築家・隈研吾氏がデザイン設計を手掛けたMAIN棟とサステナブルな生活体験を提供するTENOHA棟の2棟が隣り合う施設です。

そしてTENOHA棟では、誰もが気軽に参加できサーキュラーエコノミーを知るきっかけになる取り組み「CIRTY(サーティー)」が始動します。

Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)TENOHA棟イメージ。

SDGsに貢献することはもちろんのこと、サーキュラーエコノミーに関する人・モノ・アイデアが集まるリアルな場(TENOHA代官山)と、情報発信メディアの2つを軸とした活動を推進する「CIRTY」。そのCIRTYの一員として活動しているのが、一般社団法人SWiTCHです。

渋谷の街を眺めながら、「代官山のTENOHA棟はコンパクトなスペース。だからこそ、誰もが横断的に交流していけると思うんです」とにこやかに語るのは、SWiTCH代表の佐座マナさん。

佐座 マナ|一般社団法人SWiTCH代表理事。Mock COP グローバルコーディネーターとして、140ヵ国の環境専門の若者をまとめ、COP26と各国首相に本格的な18の政策提言を行い、世界的な注目を浴びる。COP26日本ユース代表。2023年「Forbes Japan 30Under30」に選ばれ、現在は2025年大阪・関西万博に向け、100万人のサステナブルアンバサダー育成プロジェクトを推進中。

どのような想いで「CIRTY」に取り組むのか。SWiTCHとして循環型社会を実現するための活動を始めた経緯や、活動を代官山の街、あるいは広域渋谷圏で行う意義とは。「CIRTY」が描く未来の話から、私たちが目指すべきサーキュラーエコノミーのあり方が見えてきました。

気候変動への“危機感”を、若者の声から始まったSWiTCH

─佐座さんが代表を務める一般社団法人SWiTCHとは、どのような団体なのでしょうか?

佐座マナ(以下佐座):SWiTCHは、地球ひとつで暮らしていくために世代・業界・国境を越えてつながり合うプラットフォームとして、10代、20代の若者を中心に活動している団体です。気候変動のインパクトを最も受けやすい世代でもある私達が、どのような社会を求めるのか。その声をピックアップして、社会を一緒につくっていくために、多様なコラボレーションをスタートさせ、都市の中でいかに生物多様性を実現させていくかを目指しています。

─この活動自体は、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?

佐座:きっかけは学生時代にまで遡ります。私は日本人ですが、高校卒業後はカナダの大学に行き、その後は国連に入ることを目指してロンドン大学の大学院に入りました。ですが、ちょうど大学院で学んでいた時期にコロナ禍が始まってしまって。国連が毎年開催している2020年の気候変動会議(COP26)が1年延期になり、私たちが暮らす地球環境が危機的な状況にあると言われているにも関わらず、実質的には2年の空白期間ができてしまうことになりました。

COPは世界中の国が参加し、この気候危機にどのような目標を持って取り組むのか、発表や議論をする場所です。そのCOPがリアルの場で開催されないのであれば、今後この気候変動の当事者となる私たち若者の意見を、国連や官僚レベルの人たちにいかに伝えるべきか、オンライン上で話し合えばいいのではないか。そのような考えから、若者が中心となり模擬版のCOP26、「Mock COP26」を開催することにしました。

私はグローバルの運営メンバーとして、140カ国2000名以上の環境を専門とする若者から330名を選抜し、国際会議を開催、各国首相に「18の政策提案」を行いました。さらに、その中で一番投票率が高かった「気候変動教育を義務付ける」という政策を、COP26の参加国にプッシュしていったのです。その結果、COP26の議長国であるイギリス政府とイタリア政府が同意してくださり、賛同していただいたUNESCOとUNICEFさんには、世界中の政府の人たちにその声が届くようサポートしていただくことができました。

引用:https://switch.bio/about-our-work/

佐座:しかし、日本に帰国した後もこの活動を続けていこうとしたところ、官僚や企業の人たちからは「まぁ環境も大切だよね」という曖昧な答えが返ってくるばかりで、やってもやらなくてもいいという反応だったんです。世界では「環境課題には絶対取り組まなきゃいけない」と考える人が多かった反面、日本では「環境課題に取り組むことは一つのオプションでしかない」という課題意識の低さを痛感しました。

ですが、実際にデータを見れば、今の気候は明らかにおかしい状態にあるし、災害が増えたことで気候難民の急増も見込まれています。国家も災害対策にどうお金を使うのか考えなければいけません。たとえば、日本の海面がもし1m上昇したら、日本の砂浜の何%がなくなると思いますか?

実は、90%なくなってしまうと言われています。そうなると、東京23区の多くのエリアが冠水してしまう。また、海水の温度が上がることで海の生態系も代わり、2100年にはお寿司が食べられなくなるとも言われていて、そのような危機が目の前に来ているのです。

日本は今、循環型社会に移行する過渡期を迎えている。だからこそ、それをサポートする教育が必要だと考えて、2021年にSWiTCHを立ち上げました。

─具体的に、日本にはどのような課題があると捉えていますか?

佐座:日本でも、豪雨で新幹線がストップしてしまったり、道路が冠水してしまったり、日に日に災害が増えてきているのをみなさんも実感しているのではないでしょうか。こういった災害が起きているのは、私たち地球に住む人間が、自然から資源をとり過ぎてしまっているという現状が改善されていないからだと考えています。実際に、今までは「気候変動」という言葉が使われてきましたが、国連の事務総長、アントニオ・グテレスは2020年から「気候危機」という言葉を使うようになり、WWF(世界自然保護基金)でも、世界中の人が日本人と同じ生活をしたとき、地球2.9個分が必要だと発表しています。

そう聞くと、私たちが今まで通りの暮らしを続けていては、地球環境に良くないことは一目瞭然ですよね。そこでどういうふうにライフスタイルや働き方を改革すれば、地球一個分に収まるのか。実践に向けて具体的な方法を見つけていく必要があります。

サステナブルな社会へと世界がダイナミックに移行する中で、現在の日本の取り組みは大幅に遅れています。しかし、かつての日本は環境先進国と言われていたほど発信力が強く、インフラや技術開発も積極的に行われてきました。そして文化的な面でも「もったいない精神」があり、環境とともにある生き方を尊重してきました。SWiTCHでは、このような日本が持っている元々のポテンシャルを活かして、レベルアップしていきたいと考えています。

「渋谷を世界一の緑の街にしていきたい」という想いへの共感

─今回の東急不動産とのプロジェクトが始まったきっかけを教えてください。

佐座:東急不動産と繋がったのは、一般社団法人渋谷未来デザインが主催する「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」に参加したことがきっかけでした。そこで関わりながら色々とお話をする中で、東急不動産が「渋谷を世界一の緑の街にしていきたい」という強い意欲を持ち、本気で実現しようとしていると感じたんです。

こんなコンクリートジャングルを緑に変えていくなんて想像もつきませんが、実現することができれば、世界からも注目される街になるはず。環境先進企業として邁進する東急不動産に、私たちも大きな期待を持ちましたし、すぐに「一緒にやっていきましょう」と話が進んでいきました。

そこから2年ほどかけて、さまざまなプロジェクトを進めながらさらに話が広がり、今回の代官山のプロジェクトも自然に「一緒に共創していこう」という流れが発生していきました。みなさん仲間意識がとても強く、オープンな人たちばかりで、「みんなでこの渋谷を変えていきたい」という想いがあるからこそ対話が深まっていく。とても素敵な機会をいただいているのだなと、しみじみ感じます。

─代官山というエリアには、どのようなイメージがありますか?

佐座:渋谷駅周辺とは違い、代官山にはただ遊びに来る人たちだけではなく、暮らしている人たちがたくさんいて、感度も高いというイメージがあります。具体的には、ファッショナブルな人たち、オーガニックが好きな人たちでしょうか。そして、経営者層や国際人材として活躍されている人たちも集まっている。そういうユニークな人たちが、暮らしの拠点として代官山を選んでいることにこの街のポテンシャルの高さを感じています。

サーキュラーエコノミーを暮らしのすぐそばに。
「CIRTY」始動

─始動しているプラットフォーム「CIRTY」では、どのようなライフスタイルの提案をしていくのでしょうか?

佐座:「CIRTY」はチャレンジングな場所として、代官山にいる人たちを巻き込み、循環型のライフスタイルを提案し、実際に体験できるエリアへと変えていきたいと考えています。現代の私たちにとって本当に必要なのは、社会システムを変えること。ただ人が物を買い、生きて、暮らすだけでは、チャレンジはできません。この場所に自分たちの構想を持ち込み、試してみて、いろんな人たちと対話をしていく中で、日本らしいサーキュラーエコノミーのあり方を提示できるはず。社会の基盤を考え直し、新しいライフスタイルにチェンジしていく価値とは何かを、この場所で一緒に考えていき、代官山に集まる人たちを巻き込めるようなコミュニティづくりをしていきたいですね。

─サーキュラーエコノミーを暮らしに取り入れ、アイデアの交換や新たな取り組みが生まれた先に、どのような変化が生まれると思いますか?

佐座:日本はCO2排出量が世界5位と、世界的に見ても環境負荷を多くかけている国です。ですがこの状況は、裏を返せば環境に貢献する「鍵を持っている」状況だとも言えます。たとえば、「もったいない精神」をビジネスやライフスタイルの中でどのように活かしていけば、変化を生み出せるのかということも考えられると思いますし、そういった代官山にいる国際的な知識や感度を持っている人たちのネットワークを活用して、生み出した事例を輸出できるのではないかと考えています。代官山が良いモデルケースとなり、日本のモデルケースとなれば、世界のモデルケースにもなれるはずだと考えています。

施設のオープンに先駆けて「CIRTY」のWEBサイトもローンチ。サーキュラーエコノミーにまつわる情報を活動のレポートを交えながら発信していく。

目指すのは、環境に対するあらゆるハードルを下げること

─サーキュラーエコノミーが大切だということはわかっていても、なかなか一歩を踏み出せない人は多いと思います。ハードルを下げるためにどのようなアプローチを考えていますか?

佐座:「CIRTY」のミッションとして、「その一歩を踏み出すための、あらゆるハードルを下げる」という言葉を掲げているのですが、レベル感というのは人それぞれにあるものです。サーキュラーエコノミーという言葉すら聞いたことない人たちもいれば、コンセプトはわかるけれど、実践する方法がわからないという人たちもいる。ですから、まず一番簡単なコンテンツから用意し段階的にレベルアップできるステップを用意しておくことが「CIRTY」ではできると思っています。

「CIRTY」があるTENOHA棟には、サーキュラーエコノミーをビジネスレベルで実現するために相談できる施設があり、もう一つのMAIN棟の中にもコワーキングフロアがあるため、企業と一緒にプロトタイプを考えてみようというセッションが生まれるケースもあるでしょう。このように、参加者のレベル感に合わせて必要な場を用意していきたいと思っています。

また、そもそも今までなぜ循環型が日本では普及していないのかの構造的な課題についても考え直す必要があります。たとえばヨーロッパ連合であれば、2014年ぐらいから小学生にも循環型の考え方を教えていて、その子たちが今大人になり、豊かな自然がベースにあってこそ社会生活や経済活動が安定するという考え方が当たり前になっています。また、日本の年功序列、縦割り社会の風潮も影響しています。国際的な潮流をつかみ、日本ならではの循環型社会のあり方を見い出すため、国や自治体と連携していきながら、代官山を盛り上げていけたらと思っています。

TENOHA棟と「CIRTY」のプラットフォームの連動イメージ

─現時点では、どのようなゴールを設定されていますか?

佐座:2022年にカナダ・モントリオールで開催された「生物多様性条約第15回締約国会議」では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2050年のビジョンとして「自然と共生する世界」を掲げています。東急不動産でも、8月に国内不動産業で初めてTNFDレポートを発表し、手がけている物件の緑地面積割合が回復傾向にあると伝えました。もちろん「CIRTY」も、この国際条約が掲げるゴールに基づき、生物多様性を増やしていくための活動の参加方法や、貢献のための接点をつくっていきたいと考えています。

企業、学校、市民、みんなで取り組むためのハブへ

─今後、どのような機会の創出を考えていますか?

佐座:代官山に住む、または訪れることで、生物多様性とは何か、サーキュラーエコノミーとは何かという知識が自然と身について、さまざまなステークホルダーが交流することを生まれたアイデアをアクションできる機会をつくることで新しいビジネスが生まれる場になるなど、エンタメや住居だけではない街としての役割が増えていくと考えています。

それに加えて、たとえば近隣の学校や、そこに通う生徒や学生さん、その親御さんをどうやって巻き込むかを考えるのも楽しみですね。循環型について理解する、実践するためのワークショップはもちろん、国際的に活動されている方々をお招きし、世界のサーキュラーエコノミーの事例をここで紹介していただいたりするイベントなども定期的に開催していきたいと思います。また、日本の企業や自治体の好事例を発信することも考えていて、どんなサーキュラーエコノミーの実践があるのか、テック関係の人たちの展示をして伝えていくというギャラリーとしての機能も持たせていきたいと思っています。

佐座:たとえば、循環型のマテリアルをつくったけれど、これを活用してくれる人はいないか探している人がいたら、ここに来て相談してもらい、活用方法を考えていけるでしょうし、循環型の全体像が見えて、さらに体験や交流ができて、体験を楽しむことができる。習い事として考えてもらう人たちもいれば、環境に配慮したビジネスのあり方を考えたい人もいて、育成のサポートもすることができる。どんな方にも接点がある場を創出していきたいですね。

乗り越えるべき社会的なハードルが明確に見えているからこそ、どのようなコラボレーションをしていけばいいのか、プロトタイプで実践していき、ハードルを乗り越えることで、循環型の暮らしのモデルとして、海外にも通じるロールモデルになっていけるような流れをつくれたらと思っています。

─これから一緒にやっていくコラボレーターの存在も、重要になってきそうです。

佐座:そうですね、循環型に取り組む企業や団体は増えてきているので、その方々をちゃんと繋げて、市民や自治体、学校も参加していきながら、一緒に大きなプロジェクトに変えていきたいですね。だからこそ、ハブとして常に新しい考え方を持ち、多様な人と一緒に実践するオープンさも求められていると思っています。代官山の活動を、ゆくゆくは渋谷全体にも広げていくために、自治体の方々にも対話の中に参加していただき、システムをどうやって変えるか、一緒に道筋をつくっていきたいですね。

TEXT:Eri Ujita /PHOTO:Shoichi Fukumori

佐座 マナ

一般社団法人SWiTCH 代表

一般社団法人SWiTCH代表理事。1995年生まれ。カナダ ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学院 サステナブル・ディベロプメントコース修了。Mock COP グローバルコーディネーターとして、140ヵ国の環境専門の若者をまとめ、COP26と各国首相に本格的な18の政策提言を行い、世界的な注目を浴びる。COP26とCOP28日本ユース代表。2023年「Forbes Japan 30Under30」に選ばれ、現在は2025年大阪・関西万博に向け、100万人のサステナブルアンバサダー育成プロジェクトを推進中。

フォレストゲート代官山

東急不動産が手がける『職・住・遊』の近接を具現化し「緑/環境サステナブル」と「食」をキーワードに豊かで新しいライフスタイルを提案する新しい複合施設。本物件は代官山駅至近かつ八幡通り・代官山通りに面する立地に、賃貸住宅・ シェアオフィス・商業施設で構成される世界的に有名な建築家・隈研吾氏がデザイン設計を手掛けた MAIN棟と、サステナブルな生活体験を提供するTENOHA棟の2棟からなり、2023年10月19日に2棟同時に開業した。

引用:PROJECT LIFELAND SHIBUYA「SWiTCH 佐座マナが「CIRTY」からはじめる、サステナブルな緑の街・渋谷」

  • 7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 11 住み続けられる まちづくりを
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 15 陸の豊かさも守ろう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。