TENOHAにかける想い
地域の皆さまと手と手をたずさえて成長していく場を目指すTENOHA。
なぜ、今、地域共生なのか?そこに込められた東急不動産の想いと本気度、
そして誕生秘話を「TENOHAの父」東急不動産西田取締役と気鋭の若手社員たちとのクロストークでお届けします。
Crosstalk
インフラ・インダストリー事業
ユニット長
東急不動産㈱ インフラ・インダストリー事業ユニット事業戦略部 兼 環境エネルギー事業本部
インフラ・インダストリー事業ユニット
環境エネルギー事業本部
環境エネルギー事業第二部
渋谷事業本部
渋谷運営事業部
ホテル・リゾート開発企画本部ホテル・リゾート第二部
「都市と地方、このあり方でいいのだろうか?」
危機感を行動に移す。
そもそも、TENOHAとはなんですか?
元をただせばTENOHAは、代官山の商業施設跡地をそのまま使いながら5年間限定でスタートした複合施設の名称です。「みんなでつくる」をキーワードに、新しいライフスタイルやビジネススタイルを創造・提案する実験的な試みでした。2019年に閉鎖しましたが、今、発祥の地である代官山にまたTENOHAが戻ってきてくれてうれしく思います。
様々な地域でTENOHAを展開する理由は?
地方と都心が、手を取り合って生きていく社会をつくりたいからです。首都圏の面積は、全国のわずか5%程。しかし、そこには、2020年時点で4,434万人もの人が集まります。日本の人口は約1.3億人ですから、日本にお住まいの方の約4割が、首都圏へ集中しています。また10億円以上の資本金がある企業も、ほとんどがこのエリアに集まっています。当社は全国で仕事をしていますが、われわれとしても地方と都心の格差が大きくなっていると感じます。そして、私たちが都市部で生活する基盤は、ほとんどを地方がつくってくださっています。地方がつくった食べ物とエネルギーを、都市部で消費している状態です。
「私たちは都市部で生活しているから、他の地域は知らないよ」そのありかたで、いいのだろうか?地方にも利益を還元するために、力を合わせてやっていきましょう、という話になりました。そこで、その「地域共生」の拠点としてかつて代官山で当社が使っていたTENOHAという名称を再活用することに決まったのです。
埼玉県東松山市にある「TENOHA東松山」が2019年に代官山の初代TENOHAが閉鎖した後に最初に開業した物件です。再生可能エネルギー事業の推進において、地域との共存は必要不可欠であるとの考えのもと、TENOHAの運営がスタートしました。
男鹿や能代では現在のところ再生可能エネルギー事業は展開していないようですが?
太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーについては、地域住民の方々の反対があったり、条例によって発電施設の設置を制限する自治体もあります。ですが、脱炭素社会の実現に向けては、地域の皆さまと共に事業を進めていくことが重要だと考えています。TENOHAをきっかけに「この会社は、こういうことをやってくれるんだな」と実感していただいて、再生可能エネルギー事業の導入によって地域の賑わいが生まれる様子を体感いただく。それがモデルとなって他の地域に広まり、全国で再生可能エネルギー普及を押し進めていく原動力にしていきたいです。
企業にスポンサーを募ることなどにより、独立運営できるようにしています。民間企業なので収益をあげないといけないのですが、その収益を誰にどうやって返していくかも考えないといけないですね。私たちが再生可能エネルギー事業によって得た収益を、地域の暮らしをサポートできるようなことで返していくのも、ひとつの地域還元のかたちだと思います。そういった東急不動産の考えが他の地域にも広がる、そういう循環こそが持続性だと思っています。
「地域課題は、画一ではない。」
デベロッパーだからできることを。
TENOHAが実現しつつある地域共生とは?
地域には個別の課題、属性があります。その地域にフィットした形で、貢献、共生していくような施設であるというのがしっくりくると思っています。通常私たちが建物を作るときは、どこでも共通する「仕様」というものを決めながら進めることが多いです。ですがTENOHAには、こういった建物だという仕様がいい意味でありません。日本各地にあるTENOHAがそれぞれの地域にフィットして、TENOHAがあることで地域同士も繋がれる点がいいところかなと思います。
秋田の男鹿・能代に関しては、地域住民の皆さまや自治体の方々から施設活用のご要望を頂いたのが廃校となった小・中学校と既存の事務所でした。地域での認知はされているものの、まだまだ活用の余地がある施設についてご相談を頂き、計画がスタートしました。地域に何度も足を運び、地元のニーズを取り入れつつ社内でも様々な部署と連携しながら、計画を進めました。
私が担当する蓼科の場合は、どちらかというと事業課題から入りました。歴史ある別荘地であるため、地元の方々からのなじみが薄い点が課題でした。そこに入り込んでいくにあたり「新しくTENOHAができましたよ」だけでは、地元の方々に対して魅力がない。実はこのTENOHAとは再生可能エネルギーからはじまっていますよ、代官山にもありますよ、というところがアピールになると体感できています。
TENOHA代官山では、近隣の猿楽小学校や企業様と一緒に子供たちなどに向けてワークショップを実施することで、再生可能エネルギーとはどのようなものなのか、を発信させていただいています。
秋田では、地域住民の皆さまからTENOHAの地域共生に対するポジティブな感想をいただくことが多いです。男鹿・能代共に地域住民の皆さまの思い入れがある施設を活用させて頂いておりますし、能代では1,000人以上の人が集まる規模のイベントも実施しました。すでに地元にある魅力的な資源を活用して、それを通じて地域住民の皆さまにも喜んでいただける。秋田で事業をやっていない当社でも、地域住民の皆さまや自治体の方々に受け入れてもらうきっかけとなります。まちづくりを通した地域共生は地元にとってインパクトが大きいことを体感しています。
東松山は、TENOHAのカフェが大人気で、平日でも列ができることがあるほどです。地元の野菜を食べられる、広くて光が入るような空間のなかで仕事もできる、地元の人に愛される施設になっていると思います。東松山での取り組みは埼玉県の他の地域からも、注目されています。
秋田の男鹿・能代の場合は、地域に類似施設が少ないことから、地域の皆さまと共に、一から運営・営業手法を検討しています。当社だけではなく、行政や地域住民の皆さまと一緒にTENOHAをつくり、地域にとってより良い施設になるよう考える体制を構築できているところに、大きな手ごたえを感じています。
蓼科は開業後まだ間もないですが、開業イベントの来場者分析では4割弱が地元から蓼科リゾートタウンに初めて来訪されたというデータがとれました。リゾート地なので、都市部の人が避暑にやってくるのが蓼科でしたが、地元の方から「TENOHAがあったので来てみました」と言っていただけて、地域とのつながりを感じられました。
北海道の松前町にもTENOHAをつくっています。当社は、松前で風力発電事業をやらせていただいているので、ビジネスを広げるためにやっている側面も確かにありますが、地域と共に発展するがこの事業の鉄則です。ビジネスと地域の発展、その2つがつながればいいと切に願います。そのかじ取りをするのが我々です。
「未来の暮らしも考える。」
もっと環境について考えるきっかけに。
一方で、TENOHAは環境発信の側面もあるとか?
海外事例では国も企業も、環境と向き合うことに非常に前向きだと感じます。これはきっと教育の差が大きいのではないかと思います。海外で勉強したお子さんが日本に帰ると違和感や疑問を持つことが多いという話も聞いたことがあります。だからこそ、次世代に対して、環境の大切さを教えるような環境教育の取り組みをTENOHAでも行っています。今の暮らしを豊かにするのは当然としても、地球や世の中のためには未来のことも考えていくべきだと思います。
環境教育でいうと、当社の再生可能エネルギー発電所に周辺地域の子供たちを招いて、どんな発電の仕組みであるかなどを学んでもらったりしています。発電所のある地域をはじめ全国の子供たちにもっと環境について考えるきっかけをつくれれば思っています。
我々社員の環境意識の高まりも重要で、たとえば、東松山ではソーラーシェアで野菜やお米を育てる実証実験をしていますが、地域の農家さんとコミュニケーションをとりながら、社員も収穫に参加させて頂いています。その畑でとれた野菜を社内で販売するなどといった取り組みにより、社員意識も深まっています。
以前、東松山のチームとの連携可能性について相談があり、軽井沢のリゾートと食循環の取り組みを実現することができました。ホテルのビュッフェでどうしても出てしまう食残渣をコンポストによって堆肥化し、その堆肥を東松山での野菜作りに使用してもらい、その野菜をホテルの食事で提供することで、フードロス解決型の食循環施策となっています。
食循環の取り組みを通じて、TENOHAを知ってもらえるきっかけとなりました。お客さまの反応も「素敵な取り組みだね」と、とてもポジティブだったとホテル支配人からも聞いています。
「手と手を合わせてみんなで。」
これからも地域と共に発展してゆく。
今、各デベロッパーも地域共生を重要なテーマに掲げ始めていますが、 東急不動産、TENOHAならではの想いなど
当社は再生可能エネルギー事業やリゾート事業をはじめ全国に幅広い事業ウィングを持っていることから、不動産デベロッパーの中でも地域との接点が多い企業だと考えています。「地域共生」に様々な形はあれど、単なるイベントの実施や経済的な支援などといった一過性の支援ではなく、施設・拠点を設け、中長期的な地域の賑わいに貢献していくという姿勢がTENOHAのスタイルだと思います。
代官山単体では地域に直接関わるのは難しいかもしれませんが、地域と都市をつなぐ役割を担っていきたいです。地域と都市をつなぐ取り組みを実施するハブのような機能として、代官山を使っていければと思います。
例えばTENOHA代官山では建材に間伐材を使っていますが、その産地にちなんだイベントを行うなど、地域の魅力を都市でアピールすることができれば、各地域の自治体にとっても魅力的なのではと考えています。
TENOHA蓼科は、別荘オーナーをはじめとした地域の住民、地元企業の皆さまに、活動拠点や取り組み発信の場として使っていただきたいと思っています。当社はその旗振り役や新しい仕掛けづくりを担いながら、TENOHAの活動については徐々に地域の皆さまが主役を担って頂けるようにしていきたいです。地域の皆さまでTENOHAがどんどん活かされるようになると、地域に良い循環が産まれるのではないかと思っています。
地域共生というキーワードを考えると、方向性は2つあると思います。1つ当社が仕掛けづくりを行って、施設がその地域の方に愛されるという姿をつくっていくこと。もう1つは、TENOHAを通じた相互交流をつくることで、今まで知りえなかった地域同士がつながれることです。どちらも、地域の活気に繋がるとてもポジティブなことだと思います。
TENOHAはそもそも「手と手を合わせてみんなでやっていきましょう」がテーマです。地域によってバラバラな課題に対して、アジャストしながら地域の皆さまと考えていきたいです。
「ニーズはなんですか? では東急不動産がお手伝いできるのはこれです」というように、対話していくようなイメージです。TENOHAは「東京からいろいろなことを勝手にやる」という姿勢ではいたくないのです。
言い過ぎかもしれませんが、都心にいると人が自ずと集まります。地域では、ものも、人も勝手に寄ってきてはくれない。それが、TENOHAをフックにすると、すごく喜んでいただけます。たとえば、廃校になった小・中学校の活用によって、かつての学校の卒業生の方や地域の皆さまから、「昔の学校のような賑わいが戻ってきてうれしい」「遊休施設をうまく再生してくれてありがたい」といったお言葉を頂いています。これからもそんな求心力のある拠点を増やし、もっと地域のために貢献できればと思います。