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vol.422022年03月25日

「渋谷まちづくり」篇

渋谷区長と考える、ダイバーシティ&インクルージョン

※音声が流れます。音量にご注意ください。

全国に先駆けてパートナーシップ制度を導入するなど、積極的にダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を進めている渋谷区。今回は、当社が拠点を置く渋谷区の長谷部 健区長をお招きし、区としてD&Iを推進することになったいきさつや、D&Iの視点から考える渋谷のまちづくり、さらに渋谷区として企業にどのようなことを期待するかなどについて、当社の岡田社長と語り合っていただきました。

岡田 正志
代表取締役社長

長谷部 健
渋谷区長。東京都渋谷区出身。株式会社博報堂を経て、NPO法人green birdを設立。2003年から渋谷区議を3期努め、「渋谷区パートナーシップ条例」などを提案した。2015年、渋谷区長選で初当選し、現在2期目。

渋谷は、多様な文化や価値観が調和する街

長谷部:「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を未来像(ビジョン)に『成熟した国際都市』を目指す渋谷区は、その実現に向け「ダイバーシティとインクルージョン」(D&I)という考え方を大切にしています。D&Iとは、あらゆる多様性を受け入れ、その違いを認め合い、活かしていくことです。

渋谷は都市として新しく、戦前戦後に日本全国から人が集まってきた街です。そのため、さまざまなルーツの人たちが混じり合い、時にぶつかり合いながら、次第に調和して新しい価値、文化を発信してきました。「竹の子族」や「ロカビリー族」がいたり、親の世代では「マンションメーカー」(※1)と呼ばれるパタンナーがDCブランドを興したりと、幅広いジャンルのファッションや音楽が生まれ、常に多様な文化や価値観が身の回りにありました。
そんな渋谷で生まれ育ち、渋谷のカルチャーに揉まれてきた、ということがD&Iを大切にするようになった要因のひとつになっていると思います。

(※1)マンションメーカー...大きなオフィスを借りることなく、小さなマンションの一室を拠点に、スタッフ数人程度の規模で、創作や営業活動を行うメーカーのこと

『パートナーシップ証明書』の発行や条例の提案については、アメリカを訪れた際、性的マイノリティの人に会ったことがきっかけです。
帰国して周囲を見渡してみると、『この人もそうかな?』となんとなくわかるようになりました。そのようななか、NPO法人での活動を通してトランスジェンダー(※2)の方にお会いする機会がありました。
ちょうどその頃、私は結婚し、婚姻届を提出するという経験をしました。それまでは、こういった書類のことをただの紙でしかないと思っていたのですが、いざ書類に記入して提出してみると、結婚したという実感が湧いてきたのです。
そこでその方に『区ができる範囲で、二人の関係を証明できるような証明書を発行できたらうれしい?』と聞いてみました。すると『すごくうれしい』と答えてくれたのです。それを聞いて、『パートナーシップ証明書』の発行を議会に提案することにしました。

(※2)トランスジェンダー...出生時に身体で割り振られた性が自身の性同一性またはジェンダー表現と異なる人々を示す総称

渋谷では、LGBTQだけではなく、さまざまな分野で多様性が育まれていますが、これこそが、"渋谷区のちから"だと思い、渋谷区の基本構想におけるビジョンを『ちがいを ちからに 変える街。』としました

ご自身の生い立ちなど踏まえ、D&I推進のきっかけを語る長谷部区長

社会と足並みを合わせながら企業のD&Iを推進

岡田:今でこそD&Iの価値観は浸透していますが、5〜6年前に打ち出したというのは素晴らしいと思います。私たち企業側もD&Iを強く意識した経営を進めていますが、いまだに日本のジェンダーギャップ指数は世界156カ国中120位と遅れている状況です。日本は型破りなことが受け入れられにくい社会ですので、トップが自ら進めていかないと意識改革は難しいと感じています。多様性がなければ新たなことに踏み出せないのは企業も同じです。渋谷の企業として、区と同じ方向を見ていきたいと思っています。

10年以上のお付き合いがあり、和やかに話をする長谷部区長と岡田社長

岡田:ジェンダーギャップ指数において、日本は経済や政治の分野で男女に与えられる機会は、いまだ不平等だと評価されていますが、当社では採用においても配属においても、特別に『男女』を意識することはないように思います。私が入社した時代でもほぼ同数の男女を採用するなど、先進的な取り組みをしていました。しかし、当時の社会状況のなかでは、前に進み過ぎていたのかもしれません。女性は結婚したら退社するという風潮があり、入社しても結局多くの女性社員は退社してしまいました。社会全体の動きと合わせなければ、企業がいくら頑張ってもうまくはいきません。
企業としては、社会を少しリードしつつ、歩調を合わせることが大事だと考えています。最近は男性だから、女性だから、という固定観念を意識する時代ではなくなってきているのではないでしょうか。

社会と歩調を合わせながらD&Iを進める重要性を語る岡田社長

長谷部:男女平等の雇用機会については企業だけの責任ではなく社会全体の空気を変えることが必要です。「育休から復帰しづらい」「男性は育休を取りにくい」といった問題は、社会の課題として解決しなければいけないと考えています。
男性、女性の固定概念でいうと、例えば「男の中の男」、と言われてもぴんと来ないですし、男性の中にも女性的だと思われる部分があるなど、性別のグラデーションは人それぞれです。海外ではすでに行われていますが、区では書類の不要な性別表記を撤廃する取り組みも進めているところです

制度を後押ししたのは、企業の取り組み

長谷部:渋谷区では2015年9月に全国に先駆けて「パートナーシップ証明」を導入しました。制度施行から7年目が経ち、見た目はそれほど変わっていませんが、目に見えない部分が変わった気がします。行政としては制度を立ち上げて波紋を投げかけましたが、それを具体的な形で取り入れ、拍車をかけてくださったのは民間企業の皆さまです。企業側が「パートナーシップ証明」をもとに福利厚生を受けられるようにしたり、保険の受取人として適用したりしてくださったおかげで、制度のメリットを実感し、幸せを享受できた人が多かったと思います。
「パートナーシップ証明」が施行された当時は、反対運動などもあり大変でした。しかし、今はそのような動きもまったくありません。世の中が前進していることを実感していますし、取り組んできてよかったと思っています。また、東京都をはじめ、毎年多くの自治体が新たにこの制度の導入を決めています。視察や問い合わせも多く、今やマイノリティの方だけの問題ではないと感じています。

パートナーシップ制度導入時を振り返る長谷部区長

"さまざまな人たち"に配慮したサステナブルなまちづくりを

岡田:現在、障がい者や子ども、妊婦、高齢者、LGBTQなど「配慮の必要な人たち」は全人口の約3割以上ともといわれていますが、今後高齢化社会が進むと「配慮の必要な人たち」の数は4割になります。そう考えると誰にとっても快適なまちづくりを考えなければいけません。
6〜7年前、娘家族とベビーカーで渋谷を訪れたことがあります。そのとき、渋谷は上下の動線が整備されていないため移動が非常に難しく、配慮が必要な人にとっては訪れにくい街だと感じました。その経験が、多様な人が混じり合い、触れ合えるような街にしようと、渋谷の再開発の意義を改めて認識する機会にもなりました。
渋谷を含め、大規模な開発は必然的に似たような街並みになりがちです。しかし可能な限り、均一化しない開発をしたいと考えています。計画的につくられたものより、歴史を積み重ね、人の思いや生活がにじんでいるほうが、個性的で魅力的な街になると思うんです。

長谷部:100年に1度の大規模なハード整備なので、そのような意識を持っていただけてありがたいです。岡田社長のまちづくりに対する思いは昔から尊敬していますし、背中を押してもらっています。渋谷はカウンターカルチャーの街でもあるので、そういった思いが残されていくのは非常に重要だと思います。原宿に裏原宿が生まれたように、街が拡大する過程で生まれてくるムーブメントというものもありますよね。

岡田:私たちが全面的に渋谷にかかわるというよりは、拠点をつくって街が広がるように促したいと考えています。あとは地域の人たちがめざすものをつくれば、思いが込められたサステナブルな街になるのではないでしょうか。
このような、街全体を考えて開発するという姿勢は、私だけではなく当社全体として引き継いでいるDNAだと思います。それと同時に、開発が大規模になればなるほど、まちづくりは地域に開かれ、地域とつながっていかなければならない。現在建設中の渋谷駅桜丘口再開発事業では、まさにそうした思いから、昔の桜丘の街の記憶をそのまま引き継いでいくような街をつくりたいと考え、開発を進めています。

まちづくりにかける思いを語る岡田社長

「渋谷民」とともに、渋谷のまちづくりに取り組む

長谷部:渋谷区に拠点を置く企業の皆さまには、ぜひ一緒にまちづくりに取り組んでいただきたいです。行政だけでは現代の多様化したニーズに太刀打ちできないこともあり、強みを持った人たちと一緒に課題を解決することが一番の近道だと思います。行政を『お上』ではなく『パートナー』として捉えてもらい、企業やNPO、地域の人たちと連携して多様な手法で問題に取り組んでいきたいです。また、企業が一歩先にいるので、区はその様子を見てバランスを取れるようにしたい。そうすれば、いろいろなことができる余白はまだたくさんあると思います。

岡田:渋谷は行政、企業、地域の連携が非常にうまく回っているので、今後も同じ方向にベクトルを合わせながら、まちづくりを進めていきたいです。そして、当社としては、渋谷周辺に住む人を増やしていきたいと思っています。簡単なことではありませんが、渋谷を訪れる人、働く人、住む人がいて、はじめて街の歴史はつながっていくと思いますので。

長谷部:渋谷に住む人を増やしたいという岡田社長の言葉は心強いです。渋谷駅周辺の開発には東急不動産さんが大きくかかわっていますので、今後100年の変化にも対応できるようなハード整備に期待しています。また、岡田社長のように隅々まで配慮してくれる方が企業のトップにいらっしゃることもたいへん心強く思っています。街全体を考えて開発するという東急不動産さんのDNAがつながっていけば、渋谷は、今後もますます皆さまが幸せになれる街になるのではないでしょうか。
この街が好きな人、働いている人、学んでいる人、思い入れのある人は、渋谷区民ではなくとも『渋谷民』であり、仲間だと思っています。私はずっと渋谷区民でしたが、「渋谷っていいね」と言ってもらえるのは、働きやすい場所があり、買い物したい場所があり、代々木公園や明治神宮のような自然があるからこそのことです。区長としては、渋谷に思いを持ってくれる人は皆さまステークホルダーだと思っています。ぜひ今後も多くの人に思いを寄せてほしいと思います。

岡田:渋谷という街にかかわる人たちには、ぜひ街への愛着を持ってもらいたいですね。渋谷といえば若者のイメージが強いのですが、ご高齢の方も多く、決して若者だけの街ではありません。企業もIT系ばかりではなく、さまざまな業種の企業があります。当社も渋谷で活躍する多様な人々を意識しながら、デベロッパーとしての役割をしっかり担っていきたいと考えています。

岡田社長、長谷部区長

対談動画 前編

対談動画 後編

LGBTQへの取り組み指標「PRIDE指標」において
最高位「ゴールド」を受賞

work with pride Gold2021

当社は、多様な人材が安心して働ける職場を目指し、同性パートナーシップ規程の制定や研修の実施、LGBTQ(※3)へのサポート体制を整えてきました。2020年は、「PRIDE指標」において、「シルバー」を受賞しております。
2021年は、ダイバーシティに関する外部セミナーに登壇、また、アライ(Ally)(※4)の活動を会社としてサポートする仕組みを創出する予定で、これらの新たな取り組みが評価され、今回「ゴールド」を初受賞しました。

(※3)LGBTQ:レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、クイアやクエスチョニング(QueerやQuestioning)の頭文字。セクシャル・マイノリティにはLGBTQ以外の多様なアイデンティティを持つ方もおられますが、PRIDE指標では便宜的にセクシャル・マイノリティ(性的指向、性自認に関するマイノリティ)の総称として使用されています。

(※4)アライ(Ally):LGBTQを理解し、支援する人を指します。

5.ジェンダー平等を実現しよう

8.働きがいも経済成長も

10.人や国の不平等をなくそう

11.住み続けられるまちづくりを

16.平和と公正をすべての人に

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。
本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。

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