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Challenge the Frontier Challenge the Frontier

vol.352021年08月02日

「ワーケーション実証実験」篇

生産性の向上効果を、
データで科学的に検証

新型コロナウイルスの感染拡大などを背景に、テレワークなど場所や時間に捉われない新しい働き方が定着しつつあります。さらに、観光地など日常から離れた環境に滞在しながら仕事をする「ワーケーション」も、従業員の柔軟な発想や新規事業の創出手段として、企業から注目されています。

一方で、ワーケーションはテレワーク以上に勤怠管理が難しい面があります。「仕事と遊びの境界線が曖昧になるのでは?」「リゾート地に行けば生産性が上がるの? アイデアが生まれるの?」といった懐疑的な声も出ており、実際の導入はあまり進んでいません。当社グループはこの課題に着目し、ワーケーションが働く人にもたらす効果を検証する実証実験を実施。さらに異業種企業と協働し、実験参加者のバイタルデータに基づいて生産性の向上を後押しするプログラムの開発や、制度化に向けた課題の解決に取り組んでいます。

ここでは、本プロジェクトの発端と推進体制、現在までの活動状況などについて、担当メンバーが語ります。

(左から)
ウコンマーンアホ万里
ウェルネス事業ユニット ホテル・リゾート事業本部 ホテル企画部

白倉 弘規
ウェルネス事業ユニット ホテル・リゾート事業本部 ホテル企画部

※担当者の所属部門は、2021年3月時点のものです。

ワーケーション市場に着目した経緯

ワーケーションの普及・促進に向けた政府・自治体の動きは、2019年ごろから活発化していました。続いて2020年のコロナ禍を機に、多くの企業がその可能性に着目し始めたのです。こうした動向を踏まえて、当社 ウェルネス事業ユニットと東急リゾーツ&ステイでは2020年6月~7月にかけて、ワーケーションプランの商品化を検討していました。議論を重ねる中で「リゾート地での新しい働き方のモデルを生み出し、企業の制度化を支援したい」という構想が固まりました。また、都市事業ユニットでは「ワーケーションを取り入れることで、働く場をユニット横断で提供できるのではないか。さらに、それをお客さまへの特典にできないか」というアイデアを持っていました。このような経緯から、社内でユニット横断の連携チームが立ち上がったのです。

実証実験から見出された課題、そして可能性

2020年7月末には、当社グループが運営する全国複数のホテルで、旅先でリフレッシュしながら仕事もできる「ワーケーション」プランを横断的に開始するというリリースを配信しました。私たちは、この専用プランの販売活動に着手すると同時に、企業がワーケーションを制度化する際に直面する、従業員の勤怠管理の難しさや、生産性向上効果のエビデンスが不足しているという課題にも着目しました。そこで、こうした課題を解決する手がかりを得る手段として、2021年3月に当社従業員を対象にした実証実験を実施したのです。

「この実験で軽井沢の当社施設に宿泊した際、『午前中は仕事。午後は休みにして、14時にここで家族と待ちあわせよう』といった計画を事前に立てたことで、いつも以上に仕事に集中できました。一方で課題だと思ったのは、家族連れでワーケーションを行う難しさです。子どもの機嫌にあわせて、仕事に充てる時間を変更せざるを得なかったことも、たびたびありましたね。例えば、同行者が楽しめるツアーや、子どもを預けられるサポート体制の必要性を感じました」(白倉)」。

「ワーケーションを目的に1~2泊滞在するよりも、友人や家族との長期休暇中に一時的に仕事をするというスタイルのほうが、利用しやすいと考えています。長期休暇中なら、半日や数時間程度仕事をしても、同行者は気にしないと思いますし、休暇取得率の向上にも繋がるのではないでしょうか」(ウコン)。

約一か月にわたる実証実験の終了後は、従業員へのヒアリングとアンケート調査を実施しています。勤務時間帯や同行者の有無を分けて満足度を図ることで、ワーケーションに適した勤務ルール・働き方パターン・福利厚生のあり方などを検討しました。また、実験参加者がふだんの勤務に戻った際に、計画の立て方や時間配分などにポジティブな変化が起きており、業務の効率化につながる可能性を見出せました。

心拍や脳波などのデータを蓄積し、効果を確認

同年5月からは凸版印刷と協働し、人の心拍や脳波などをセンシングする技術を活用した実証実験を開始しました。そのねらいは、ワーケーション参加者の労働生産性向上効果をもたらすエビデンスを、センシングデータの蓄積によって取得したいと考えたからです。

具体的な方法としては、「ワーケーション前」「ワーケーション中」「ワーケーション後」の各フェーズ=計3週間分のバイタルデータを計測しました。ふだんの勤務で取得したデータをもとに、集中力が高まる時間帯の設定、適切な休憩時間の配分、運動の有無など、個々の従業員にマッチしたプログラムをリゾート地で実施。また、ワーケーション前/後のバイタルデータを比較することで、集中力などの変化を測定し、この新しい働き方の意義・効果を確認しました。

私たちは、ワーケーションの普及によって得られる「新しい働き方のモデル」を確立し、社会へ根付かせていくために、引き続きパートナー企業を募集しています。すでに不動産テック、旅行代理店、PR会社など、多様な業態からの問い合わせをいただいています。

当社と凸版印刷のリソースを組み合わせた今回の実験は、前例のない先駆的な取り組みであり、働き方の革新につながる貴重な成果が得られたと自負しています。一方、今後はワーケーション市場に向けて、さまざまな企業が参入すると思われます。その中で、いかにして「東急不動産らしさ」を打ち出していくかを考えています。そのカギとなるのは、当社独自の強みを活かしながら、今回試みたような異業種パートナーとの連携による、ほかに類を見ない価値の創出だと考えます。

今後もワーケーション導入に課題感をもつ企業を募り、科学的検証による解決策を提案するなど、普及の後押しを進めていきます。

東急不動産ホールディングスでは長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表しました。そのなかで、6つの価値創造への取り組みテーマ(マテリアリティ)を定めています。本プロジェクトは「多彩なライフスタイルをつくる」「ウェルビーイングな街と暮らしをつくる」「サステナブルな環境をつくる」「デジタル時代の価値をつくる」に該当するものと考えます。

8.働きがいも経済成長も

17.パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。
本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。

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