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vol.412022年03月23日

「米国バリューアッド事業」篇

現地パートナーとの協業でバリューアッド事業を積極展開

シアトル郊外レントンにおけるバリューアッド物件の鳥瞰写真

2012年、現地法人Tokyu Land US Corporation(以下TLUS)を設立。
現在、全米8都市圏16物件、賃貸面積約35万m2の資産を保有している米国での不動産投資事業。
既存物件の価値を高めるバリューアッド事業を中心とする、当社の米国での事業展開と、現地ならではの組織体制の構築、そして今後の海外事業の展望を担当者に聞きました。
(本記事は2022年2月の取材をもとに執筆されたものです)

加藤 光一郎
Tokyu Land US Corporation(TLUS)駐在員(2019年から駐在中)

畠山 洋平
戦略事業ユニット 海外事業本部 海外企画部 事業企画グループ グループリーダー(2015年から2020年にTLUSに駐在)

東急不動産の海外展開について 
~米国とアジアで5拠点・35プロジェクトに参画~

畠山 洋平:戦略事業ユニット 海外事業本部 海外企画部 事業企画グループ グループリーダー
(2015年から2020年にTLUSに駐在)

畠山:グローバル化が広がるなか、新たなフィールドをめざしてスタートした海外事業。
1973年のグアムでの宅地造成を皮切りに、米国およびアジア計9か国での事業実績があり、現在は5拠点で35プロジェクトに参画しています。

経済成長が見込まれるアジアでは、デベロッパーとして開発事業を手掛けるインドネシア拠点、現地パートナーと共同で開発事業を進める中国及びシンガポール拠点、リゾート運営事業を展開しているパラオ拠点の4拠点で拡大させています。

今回焦点を当てる米国では、現地パートナーと共同で木造・総戸数100戸~300戸程度の賃貸共同住宅を主なターゲットにした「バリューアッド事業(VA事業)」(※1)を中心に展開しています。

(※1)バリューアッド事業...既存建物に対して、リノベーションによるハード面改善、運営見直しによるソフト面改善により、収益性を高めることで不動産価値を向上させ、売却時に差益を獲得する事業。既存建物を改修し使い続けることで、建て替えによるCO2排出や廃棄物を削減できることから、環境に優しい取組みとしても注目されている。

米国を選んだ理由と、その特徴

(左)現地社員 Benjamin Cherney
(右)加藤 光一郎:Tokyu Land US Corporation(TLUS)駐在員(2019年から駐在中)

畠山:当社は2012年に米国へ進出しましたが、そこで米国を選んだ理由は、市場の成熟度が高い上に成長もあるからです。わかりやすい例がインフレです。米国では家賃が毎年値上がりすることはめずらしくありません。

加藤:日本では建物の経年劣化とともに賃料が下がり、運営も賃料下落を食い止める守りの印象です。一方、米国では、バリューアッドのような攻めの取組みによって、インフレ以上の賃料上昇を狙うことができます。
また売買市場もダイナミックです。不動産会社やREIT等のプロに加え、個人投資家又はその資金の運用者など多様なプレーヤーが参加する市場で、私たち外国企業も参入しやすい土壌があります。

畠山:TLUSのプレーヤーとしての立ち位置も日本とは違います。
日本では、「事業推進者」と「資金提供者」が同一であることが多く、それを「デベロッパー」と位置付けています。米国では、その2者の分業が確立されています。
基本的には「事業推進者」は現地パートナーが担い、TLUSは「資金提供者」として参画します。
日本ではデベロッパーである当社が、パートナーに推進をどう任せるか、また当社がデベロッパーの背景をどう活かせるか、は難しい課題でした。辿り着いたのは、耳を傾けて先に相手を理解しようとする事でした。よく考えると当たり前なのですが、ビジネスでも相互理解が進むと、自然と任せる安心感や話を聞いてもらえる信頼感を得られるのだと実感しています。

実績マップ

米国で基盤を固める第一歩としての「賃貸住宅」×「バリューアッド事業」

畠山:参入にあたっては、"根を張り、長く続ける" というスタンスを大切にしました。
その第一歩としてベストだと判断したのが賃貸住宅でした。
緑が多い。公園が近い。よい学校がある。治安がよい。便利である・・。そうした「住環境の理想」は共通点が多く、私たち外国人でも物件の良し悪しが理解しやすいと考えたからです。

当社カリフォルニア州所在案件の近隣の様子

またゼロから開発するよりも、既存建物に投資する方が、許認可や工事金変動のリスクを抑えられ、かつ既にキャッシュフローを生んでいるため、リスクに対応しやすいと思う中で、出会ったのが「バリューアッド事業」でした。
日本では当時あまり馴染みがなかったバリューアッド事業ですが、米国では主流の一つで大きな流動性があります。そして既存建物の持つ安定した基盤を活用できて、更に収益性を向上できる手法と知り、「これだ!」となりました。
当初は見よう見まねで始め、経験を積む中で見えてきた当社の求める形を具現化できたのが『ケントプロジェクト』です。

米国バリューアッド事業のモデルケースとなった『ケントプロジェクト』

加藤:ケントプロジェクトは物件像・パートナーシップ像という事業の2つの重要な要素について、理想に近い形を実現しています。本プロジェクトは2019年5月に取得したシアトル郊外の物件です。
シアトルは、自然が美しく、ワシントン大学等の著名な教育機関がある魅力的な都市で、近年はAmazon本社オフィス群等の再開発により、成長が続いています。
物件が所在するケント市は工場や物流施設の集積地で足元雇用が多く、元々底堅い住宅需要がある郊外市場ですが、都心へのアクセスも良いため、バリューアッドにより高所得の都心勤務者の取込みが期待できるエリアです。
本件では、人工湖隣接の立地を活かし、西海岸のサーフカルチャーを取り入れた計画が好評で、バリューアッド後は取得時に比べ25~30%の賃料アップを実現しています。
パートナーは、理想像として描いた、自社でアセットマネジメント、プロパティマネジメントに加え、工事監理もでき、当社との共同歩調を尊重するプレーヤーを選定しました。

ケントプロジェクト 左:外観 右:共用部

試行錯誤を重ねて辿り着いた、現地主導のオペレーション

加藤:リノベーション計画は、パートナーからの素案を基に一緒に計画を練り上げ、互いに納得する事業計画を構築します。 TLUSの駐在員が提案する際に気を付けているのは、日本人の感覚を押し付けず、なぜか?を客観的に説明し、最終的には現地の人々の感性を信頼することです。

畠山:感性の違いはどこから来るのか?を考えたときに、初期の案件での共用棟増築を思い出します。
現地で共用棟の活用方法を話し合った後に、最初に受け取った案が大胆な増築案で驚いたのを覚えています。ちなみにケントプロジェクトでも共用棟増築を行いました。
緻密にあれこれ詰め込もうと考えていた私と、「もっと広いと気持ちよさそう」という直感から、増築に行きついた彼らとは根本的な違いを感じました。米国で触れた、枠の中で極限まで質を高めるよりも、粗くても枠を超える価値創造を目指す文化は強く印象に残っています。

加藤:初期から携わっていた畠山さんは、パートナー探しや関係構築にご苦労されたと思います。
そこから、いかに日本人の緻密さで実務に入り込むか?ではなく、どうやったら相乗効果を出しながら任せられるか?という方向にシフトしました。現在までに、TLUSの事業推進関連の全てのチームに現地社員が加わり、駐在員と組んで二人三脚で仕事を進める体制を構築しました。

左:改修前 右:改修後(向かって左半分が改修前写真の建物で庇部分は増築)

加藤:TLUSはLAとNYの2拠点があり、5名の駐在員含めて社員は全13名体制で、パートナー会社は10社超あります。
事業推進は全て米国スタンダードで進み、駐在員はそこに参加する形になります。言語は全て英語で、大人数の電話会議も多く、最初は誰の発言かも掴めないレベルの社員でも、ゆくゆくは議論に参加できるレベルまで成長できます。
また、プロジェクトの参加者は、各々裁量を持った、開発担当、建設担当、ファイナンス担当、法律担当等の専門職で構成されています。専門家の意見含めてジェネラリストに集約し、複数のレイヤで意思決定する日本とはスピード感が異なります。そういった違う仕組みの仕事の進め方を体験し、双方の良し悪しが見比べられるのも、海外事業に携わる醍醐味の一つだと感じます。

左:LAメンバー 右:NYメンバー

東急不動産の米国法人としてTLUSがめざすもの

加藤:当面の目標は、現在約15物件ある賃貸住宅バリューアッド事業を倍以上の規模に広げていくことです。
同時に次の核となる事業を模索していくというミッションも担っています。

畠山:TLUSの今後の役割は大きく変わっていくと思います。
米国で学べる欧米式のビジネス習慣は、世界でも広く通じるスキルだと捉えており、TLUSには当社のグローバル人材の育成機能も期待しています。
また、米国には日本にはない最先端ビジネスもたくさんあります。
それを日本に持ち込む橋渡しや、国内事業の海外展開や海外投資家誘致支援の可能性もあります。実際、当社グループが行っているAgya Ventures Fund L.P.(※2)への出資では、TLUSの駐在員が企画戦略部と兼務して推進しています。
東京の海外事業部も、全拠点のハブとして俯瞰的な視点で各事業を見ながら、得られたノウハウを他で活用できるようなサポートを行い、海外事業が当社のグローバル機能の基盤になれることを目指していきたいです。

Agya Ventures Fund L.P.のログマーク

(※2)Agya Ventures Fund L.P....「日本を不動産・まちづくりの分野において世界の中心地にする」というビジョンを掲げ、北米を中心とした世界各国の不動産テック領域に特化した投資を行うベンチャー・キャピタル(VC)ファンド。既存のビジネスモデルを変革する海外の不動産テックにおいて、日本未進出の事業成長期のベンチャー企業にいち早く接触することで、当社グループのさらなるイノベーションを創出していきます。

ケントプロジェクト 上:共用部 下:専有部

東急不動産ホールディングスでは長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表しました。そのなかで、6つの価値創造への取り組みテーマ(マテリアリティ)を定めています。本プロジェクトは「ウェルビーイングな街と暮らしをつくる」「サステナブルな環境をつくる」「多彩な人材が活きる組織風土をつくる」に該当するものと考えます。

GROUP VISION 2030

9.産業と技術革新の基盤をつくろう

11.住み続けられるまちづくりを

17.パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。
本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。

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