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2020年09月30日

プロジェクト・ノート

国際ビジネス拠点をめざす「東京ポートシティ竹芝 オフィスタワー」

東急不動産と鹿島建設が共同で開発し、竹芝エリアの新たなランドマークとなる「東京ポートシティ竹芝」に、地域の特性とテクノロジーを活かした、当社としては過去最大規模のオフィスタワーが2020年5月に竣工しました。

従来の東急不動産のオフィスビルの特徴である「細部までこだわったものづくり」と、「テクノロジーを活用した最先端の取り組み」を実現したこのプロジェクト。2012年から数十名もの社員が部署横断的に関わり、開発・営業・運営に取り組んできましたが、今回は東急不動産の若手担当者5名に、オフィスタワーの注目ポイントや、プロジェクトの過程で印象に残ったこと、コロナ禍で期待を集めるスマートビルとしての今後について聞きました。

インタビュー(写真左から)
藤井 秀太:都市事業ユニット 都市事業本部 ビル事業部
鈴木 結佳:都市事業ユニット 都市事業本部 商業施設営業部
中江 翔:都市事業ユニット 都市事業本部 ビル営業部
土井 映祐:都市事業ユニット 都市事業本部 ビル事業部
井戸 慶介:都市事業ユニット 都市事業本部 ビル事業部

地域の豊かな自然と文化を活かしてエリアの魅力アップを

井戸 「東京ポートシティ竹芝」の開発事業は、東京都が推進する「都市再生ステップアップ・プロジェクト」の第2号案件であり、該当エリアは国家戦略特区に指定されています。私たちは東京都から土地を70年間借りる形で「コンテンツ産業を集積する」という都のオーダーを実現させるため、「国際ビジネス拠点に資する街づくり」をコンセプトに定めました。なかでもオフィスタワーは、IoTを活用したスマートビルとして、最先端の技術が支える国際性豊かなにぎわいのあるビジネス拠点をめざして開発を進めました。

土井 「竹芝」というエリアは、海に面しており、伊豆諸島や小笠原諸島への玄関口となる竹芝埠頭を有しています。旧芝離宮恩賜庭園や劇団四季劇場もあり、都心部でありながら自然、文化に恵まれたエリアです。一方で、首都高速道路が南北に走り、隣接する浜松町エリアと分断されていることから、地域の皆さまからは「にぎわいが少ない」「知名度が低い」という課題が上がっていました。私たちは、これらの課題を解決するため、特色を活かして魅力あふれるエリアにしようと考えました。

藤井 そこで、竹芝という新たな文化を生み出してきた「Port(港)」が、「デジタル×コンテンツ」を軸に、職住近接による新たなスタイルを生む都市(City)になることを願って「PORTCITY」と名付けました。また、世界を代表する国際ビジネス拠点となる意思を込めて「TOKYO」、地域の豊かな自然や文化とともに成長していく思いを「TAKESHIBA」に込めて、「東京ポートシティ竹芝」という名称ができ上がりました。

テクノロジーの力で快適・効率的なオフィスをつくる

藤井 オフィスタワーではICT・IoTを活用して、施設内のエントランス、店舗、エレベーター、トイレなどあらゆる場所でデータを収集し、リアルタイムにデータを活用することで、この施設を利用するさまざまな人に役立つサービスを展開する予定です。データ活用によって快適で効率的な環境をもたらす「スマートビル」をめざしています。

エレベーターホール

トイレ

中江 スマートビルの計画が具体化したのは、2018年にソフトバンクグループの入居が決まってからでした。私たちはオフィスタワーの開発当初から国際ビジネス拠点をめざすにあたって「テクノロジーを活かしたオフィスにしたい」という思いを持っていました。こうした思いについてソフトバンク側にもお話ししたところ、先方から「是非一緒にIoTによるスマートビルをつくりたい」という要望をいただいたことをきっかけに具体的な内容が決まり、ソフトバンクと連携してビル全体のスマート化を進めることになりました。

井戸 ソフトバンクの持つテクノロジーと、当社のオフィス開発・運営のノウハウを掛け合わせることで、来館者、テナント、管理運営全員にメリットのある情報提供ができるようになりました。具体的には、飲食店の来店客数のデータをもとに、空いている時間帯にクーポンを自動で発行できるようにしたり、エレベーターの混雑データをもとに、最適な通勤時間をご提案したりと、ここで働く人や来館者、テナントに快適性や効率性を提供します。また、警備員の配置やゴミ箱の状態などのデータを活用することで、無駄な人員や労働を省き、ビル管理や運営にもメリットが生まれます。

緑に囲まれ「竹芝新八景」を展開するスキップテラス

藤井 スキップテラスは、緑に囲まれた憩いの空間として整備しています。「空・蜂・水田・香・菜園・水・島・雨」の8つの景から成る「竹芝新八景」を展開し、緑豊かな環境づくりを行うと同時に、都市における生物多様性の取り組みを発信します。また、働く人々が抱えるさまざまな問題を、緑の力を活用して解決する「Green Work Style」の一環として、働く人へのリラックス効果や生産性向上をサポートします。

スキップテラス

土井 東京湾岸部特有の緑と水の風景はもちろん、竹芝埠頭を玄関口としてつながる東京都島しょ部の豊かな自然も表現されています。3階の壁面菜園にはご注目いただきたいですね。

井戸 来館者の皆さまが日常的に緑と水に触れあえるだけでなく、地域やテナントの皆さまに向けたツアー、ハチミツの収穫イベントなど、今後は地域交流や情報発信の場としても活用していく予定です。「日比谷パークフロント」「渋谷ソラスタ」などのオフィスビルで「Green Work Style」を推進することが、働く人の創造性や生産性向上につながり、独自性ある働き方の提案を実現します。さらに、DBJ Green Buildingなど、環境・地域に配慮したビルの認証を受けることにもつながります。事業として地域や環境のサステナビリティに貢献することができるというのは嬉しいです。

東京島しょの植物による壁面菜園

テラスに設置したミツバチの巣箱

数々のチャレンジの受け皿になれたオフィスタワー

鈴木 商業フロアや、浜松町駅につながる歩行者デッキなど、他にも見どころは満載です。商業フロアには、オフィスワーカーが毎日食べに来たいと思えるようなカジュアルなお店をバラエティ豊かにそろえました。新橋などのガヤガヤした雰囲気も取り入れるために「串カツ田中」「沖縄酒場 かふー」など路面店を中心に展開しているお店を誘致し、仕事帰りに思わず立ち寄りたくなるようなエリアになっています。

また、ランチやカフェなどの利用にとどまらず、オフィスのサポート機能としてひと工夫が加えられた店舗にも注目してほしいです。例えば、セブン-イレブン内に靴やカバンの修理店「ミスターミニット」が出店していたり、タリーズコーヒーには商談も可能なスペースが設けられたりと、オフィスワーカーのさまざまなニーズに応えられるようになっています。自動で陳列作業を行うロボットを導入した「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝」も、時代に合った特徴的な店舗のひとつですね。

商業エリア「みなと横丁」

土井 地域の皆さまが特に課題視されていた浜松町駅との分断を解決したのは、首都高速道路の上を通り、浜松町駅から竹芝埠頭までをつなぐ歩行者デッキです。浜松町駅から埠頭に至るまで、海はもちろん、旧芝離宮恩賜庭園、東京タワー、レインボーブリッジ、羽田新航路、新幹線も見ながら歩くことができ、東京らしさと自然の両方を感じられます。

歩行者デッキ

井戸 スマートビル、ロボットを導入したコンビニなど、オフィスタワーではさまざまな企業やテナントとの協力により新しいチャレンジができました。これらの取り組みの受け皿になれたこと自体が、このビルの一番の魅力だと思います。

藤井 チャレンジにあふれている一方で、「Building Smiles はたらく人を笑顔に」を掲げる当社のものづくりは、これまでのオフィスと変わっていません。これだけの大規模なプロジェクトにも関わらず、お客さま目線のディテールにこだわった開発姿勢は変えないまま、テクノロジーを活用した最先端のオフィスづくりができたことは良かったと思います。

リフレッシュスペース

オフィスロビー

作り込んだプレゼンルームでリーシングにつなげる

中江 オフィスフロアに入居する企業へのリーシング活動は2017年頃から開始しましたが、 ソフトバンクグループにアプローチし、本格的な商談が始まったのが2018年の夏頃です。
各企業が働き方改革を加速させていたなか、ソフトバンクグループも汐留にある本社ビルを刷新すべく、新築で大規模かつ空港やターミナル駅への交通アクセスが良好な本物件に、白羽の矢が立ちました。ソフトバンクグループの経営陣をお招きし、特設のプレゼンルームにてコンセプトやスペックなどをPR。その日に賃貸条件のご提案を実施し、それから物件を決定して頂くまで実質1週間という、スピード決着でした。

藤井 この規模でのオフィスリーシングに挑戦するのは初めてだったので、プレゼンルームは気合いを入れて作りましたよね。

中江 プレゼンルームはもちろん、そこで流すムービーもじっくり作り込みました。おかげで、このビルの眺望や空港との接続の良さなど、他のオフィスビルにはない「東京ポートシティ竹芝」ならではの良いところを体感していただけるものが作れたと思います。さまざまな企業の皆さまに見ていただきましたが、いずれも好印象をいただけました。

プレゼンルーム

鈴木 商業フロアのリーシングの際にもプレゼンルームを活用しましたが、紙の資料より具体的なイメージを訴求できたため、このビルのめざす姿に賛同した上で入居いただくことができました。テナントの皆さまには、1万人規模のオフィスが入居すること、土日も稼働する産業貿易センターやホールがあり集客が期待できること、そしてスキップテラスの環境の良さも評価いただきました。商業フロアのテナントさまからは、2階スキップテラスの一部をテラス席として利用できることも評価いただいています。プレゼンルームの活用をはじめ、オフィスビルリーシングと商業リーシングがうまく連携できたことが功を奏しました。

商業フロア

最大448名を収容するPORT HALL

プロジェクトの過程で印象に残っていること

藤井 私はやはり、スマートビルとしての取り組みを進めるのに一番苦労しました。テナントであり事業パートナーでもあるソフトバンクとの調整はもちろん、ソフトバンクのグループ企業とも日々やり取りしていたため、全体工期を守りながら、新しい取り組みを進めるのは大変でした。また、当時テクノロジーに関する知識が浅かった私にとっては、IT用語の理解も必要でした。「プラットフォーム」「PoC」「3Dセンサー」など、プロジェクトを通してひとつずつ学んでいく日々でした。

井戸 私はこのプロジェクトに着工から竣工まで関わったので、でき上がった内装を初めて見たときが一番印象深かったです。施工前にイメージしていたものが、イメージ通りに、むしろイメージ以上に良いものができた場所もあり、設計者や施行者の方と色々と協議しながら自分たちの頭の中につくりあげていたものがこうして形になり、本当にうれしく思いました。例えば6階のオフィスロビーにある水盤は、パース以上にきれいなものができ上がったと思っています。

オフィスロビー前の水盤

中江 オフィスリーシングに関しては、ソフトバンクとの交渉も大変でしたが、他に興味を持ってくださった企業に泣く泣く「お断り」をしたことも印象に残っています。2017年から約300社にアプローチし、ぜひ入居したいと言っていただけた企業が何社もあっただけに、心苦しかったですね。ただ、お断りをした際に「今後またオフィスビルをつくるときは紹介してください」と言っていただける企業も多く、私たちのものづくりが評価されたこと、それによって当社が信頼を得たという手応えを感じました。

土井 私はデッキ整備の際に、首都高速道路を通行止めにして工事を行ったことが印象に残っています。また、島しょ部との連携のため小笠原諸島に出張したのですが、行くのに24時間とリオデジャネイロと同じくらいの時間がかかることには驚きました。さらに船便が1週間に1本しかないので、一度行くと大分長旅になってしまったことも、良い思い出です。

鈴木 私は入社1年目から本プロジェクトに携わっていたので、すべての出来事が印象的です。テナント誘致のため、大阪や福岡に出張して1日に複数軒の飲食店の視察をおこなったことは、特に印象に残っています。体力的には大変でしたが、そのかいあって全国各地からいろいろなお店を誘致することができました。

コロナ禍で図らずも時代にマッチしたスマートビル

井戸 プロジェクト開始当初は予想もしていなかったコロナ禍によって、オフィスに対する認識も変わりつつあります。「ニューノーマル」の時代が来て、オフィスタワーのチャンスはかえって広がったように思います。当初、取得したデータの活用についてイメージができていないところもありましたが、デジタル化が加速する「ニューノーマル」において、オフピーク通勤やお店の混雑緩和などの提案ができるスマートビルは、図らずもちょうど時代にマッチしたといえますね。

藤井 データ活用による出勤時の混雑回避など、私たちがチャレンジしたことが、タイミング良く世の中にも求められるようになってきたので、先行して取り組んでいて良かったなと感じています。

土井 企業だけでなく、自治体もデジタル化への関心を高めていますよね。当社の参加する一般社団法人竹芝エリアマネジメントでは昨年、竹芝埠頭で開催する「夏ふぇす」に調理ロボットを導入する試みをしました。当時は「未来のお祭りではこんなことが起こるかも」という実験的な試みでしたが、今やロボット導入は「早く実現させたい」リアルな未来になってきました。今だからこそ、このオフィスタワーを拠点にどんどん新技術を取り入れていきたいです。

皆さんの今後の抱負や、オフィスタワーにかける期待を教えてください

鈴木 竹芝エリアは潜在的な魅力にあふれているのに、残念ながら、今は認知度があまり高くありません。「東京ポートシティ竹芝」がこのエリアのランドマークになることで、エリア全体の認知度を上げていければ嬉しいです。

藤井 チャレンジを続け、進化をし続ける街・ビルでありたいですね。スマートビルに関しても、実際にビルがオープンしてから運用を始め、さまざまな検証・改善のサイクルを回し、より良い仕組みに整えていきたいです。

井戸 今後、このビルを実証実験の場として使ってもらいたいと考えています。新しいことにここで取り組み、その実験内容や結果を発信することで、「スマートビル」の代表格といわれるようになりたいですね。

中江 このプロジェクトは国家戦略特区にも指定されており、大幅な規制・制度の緩和によりこれまでできなかったことに挑戦できるようになりました。その強みを活かしオフィスタワーが竹芝エリア全体を引っ張っていける存在になることで、東急不動産がつくるオフィスそのものの価値も高まればいいなと願っています。

土井 私は竹芝のエリアマネジメントにも携わっています。「ビルができて終わりではない」ということを念頭に、これからこのオフィスタワーを活用し、地域の方と一緒にさまざまな取り組みにチャレンジしていきたいです。